2013年1月8日火曜日

SSメモ:真・恋姫無双【凡将伝】

真・恋姫無双【凡将伝】(一ノ瀬)

おいおいおい、なんだこの斬新な試みは!
……というのが当初この恋姫SSを読んだ時の感想でした。その試みの正体とは読者のコメントによって主人公のステータスや物語の展開が変わるという一風変わったもの。実際の所、連載もののSSで読者の感想が物語を左右することってほとんどないと思うんですよね。それはプロット云々以前にSSとは作者が書きたいものを書いているからであり、読者は「作る」人ではなくあくまでも「読む」人だからなのです。ゆえに、読者の反応を気にして作者は読者の欲求をみたすようなSSを書くことはあっても、読者がSSに干渉できるわけがないのです。

そう、そのはずなのに。
読者のコメント数でオリ主の能力値が変化して、鬱ルートな小説プロットの展開から抜け出すとかどういうことだ(笑)

作中で説明されているので、敢えてここで具体的な内容を伝えることはしませんが、簡単にいえば「リア充爆発」という言葉を読者から100以上もらうことで、SSがよりリア充的な展開になるという仕組みです。初めてこの仕組みが明かされた時は本当なんぞこれ、と唖然ですよ。同時にすごくわくわくしましたね。なんて意欲的なSSなんだと、そしてある意味でこれこそがweb2.0時代の双方向性あるネット小説としての完成形なんじゃないかと、ひどく感動した覚えがあります。

敢えて恋姫という作品でこの形をとったというところにも注目したい所。外史の観測者に関する考察に始まり、この物語の仕組みへ絡めて、だから主人公へ影響を与えることができるんだという話しの筋は、非常に説得力のあるものとして受け入れることができましたね。これもひとえに作者の一ノ瀬氏の筆力でしょう。物語の内容としても出来が素晴らしく、袁家陣営のよさが本当によく描かれています。特に麗羽様の王っぷりなどは半端無く魅力的に描写されており、ある意味ではこんなの麗羽様ではない!と否定されても仕方ないながらも、個人的には全然ありなキャラクター改変だと思います。ただでさえ面白い物語に、さらに読者のコメントやアンケートなどがあるのだから、これはもう手放しで賞賛する他ありませんよ。

それと忘れてはいけないのがこのSSに登場する魅力的なオリキャラたち。恋姫†無双で出ていない武将はまだまだたくさんいるので、武将の名前を借りたオリキャラを作るのは意外と簡単なわけですが、いかんせん本編のキャラに比べて影の薄いことが多いのがほとんどの恋姫SSの現状だと思います。しかしこのSSではこのオリキャラたちがまた濃いの何の……。っていうかAAで自己紹介するのやめれ、笑い殺す気か(笑) もちろん本編キャラも黙ってはいません。袁家の二枚看板なんてこれほど活躍したSSがあるのかと思うくらい、きちんと武将として描かれていますし、なにより客観的な視点における一刀君のリアルチート状態の忌々しさをこれ以上ないくらい見物できますw 何がすごいって、ここの一刀君は何も原作から外れたことはしていないのに、嫌われっぷりがひどいということ。いや、そりゃまぁ、これまで触れ合ってきたキャラクターが一刀君と触れ合うだけで落ちていく様子を見せられると、なんだかなぁという気にもなりますよ。でもこれが原作であり、オリ主の居るほうが異質なんだよなぁ。そのことをオリ主自身が自覚していますし。アンチやヘイト以外のSSでこれほど一刀君が嫌われているのも珍しい。

物語は現在反董卓連合の佳境。今後どう物語が転がっていくか。読者一人一人の意思表示で、未来はどんどん変わっていきます。ぜひいろんな人に、この感覚を楽しんでほしいですね。
これほどのSSを書いてくださっている一ノ瀬氏に感謝を。