2012年9月4日火曜日

SSメモ:三国志外史

三国志外史(月桂)

恋姫SSの中でもっとも戦記として優秀なSSと聞かれたら、迷わず私はこのSSをおすすめします。そう断言できるくらい、このSSには読ませる力があります。

いやはや、蜀ルートでここまで泥臭く傷だらけな一刀くんはなかなかお目にかかれませんよ。つーか告白するヒロインが予想外すぎるんですが(笑) そもそものストーリーの成り立ちからして明らかに普通のSSと一線離れてますからねぇ。おいおい、始まりが『数え役萬☆しすたぁず』のマネージャーて……しかもだいぶ手馴れてるとは何事か!!w

突っ込みどころ満載なところから始まり、まさかの天の御遣いでないまま蜀ルートに突入し、あまつさえ死にかけてドロドロになってそれでも歯を食いしばった末に地に名を轟かす将軍になるなんて、いやーこれ本編でもよくない? って思うくらいこいつ主人公してる。天の御遣いじゃなくても、一刀くんはやはり一刀くんなんですよねぇ。なんとまあ勇ましく、それでいてかっこいいじゃありませんか。どこかの種馬さんとはえらい違いです。

作品の展開は本格的に独自に考案されています。ここまでいろいろ考えたりできる作者も非常に素晴らしい。やや固めな文体から紡がれるストーリー展開は、硬派な三国志を思い起こします。そのくせきっちり燃えるところと萌えるところを抑えているのは、やはり作者の力量か。作者に個人ファンがつくのも納得の出来栄え。

登場人物の内心のささやかさと、先行きを不安に思わせる作者の地の文が、これまた憎たらしいくらい悲劇と喜劇を予感させるものだから、読んでる時は常にハラハラ状態ですよ。原作からだいぶ乖離した展開を見せているため、まったくもって話の先が予想できませんし、かといって原作を完全無視していると言われるとそうでもないところがじれったい。くそぅ、作者め。人の純情を弄びやがって(

それにしても恋姫SSでここまで読ませる文章かける人も珍しい。
戦記というジャンル自体、書くのにとてつもなく労力が必要なんですが、それにしたってこの人別作品でも戦記モノ書いてるし、ちょっと頭の中覗いてみたい気分です。基本多数の人間を動かすのって小説では難しく、戦記ともなればそこに多数の視点移動や互いの戦略なども複雑に絡み合う為、読みにくいものが多いんですよね。
だがしかしこの作品、というよりもしかしたら恋姫SS全般に言えることなんですけど、視点移動と戦略練るのとうまい具合に書き分けられています。おそらく恋姫という原作があるためキャラクターの把握がしやすく、戦略もそれぞれどうとるかが見えやすいというのがあると思うんですが、それでもこれほどまでに戦記戦記しつつもわかりやすく戦況をかけるのは一重に作者の情熱があるゆえなんでしょうね。

作者多忙のため第2部の途中で途切れているのが悔やまれるところ。途切れ方の引きが異常なくらい気になるものなので、この焦らしプレイは正直身に堪えます。ちゃんと感想掲示板あたりで生存報告しているあたり、非常に親切なんですけどね。これまで何度突然更新の途切れた作品を見てきたことか……。作者の月桂さんの復帰が待ち遠しいです。振込先ドコーと探してしまうくらい、作者に頑張って欲しいです。はっ、この気持ち、まさか恋っ!?(違