2012年9月2日日曜日

SSメモ:Fate/In Britain

Fate/In Britain(dain)

何らかの分野における先駆者ってのは得てして支持される傾向にあるが、その質に関しては後発組の方がいいというのはままあること。ただ荒削りながら今まで見たことのないものを見させてくれるという意味で、後発組が先駆者に勝る道理はない。

Fate/In Britainという作品はだからこそ、多くの人に支持され、未だなおおすすめFate SSの中でも筆頭にあがるのだろう。

初めて本作を読んだ時は心躍りましたね。
だって舞台がロンドンですよ? アフターストーリーでロンドンものってそれだけで「おぉおおお!!」ってなるじゃないですか。それまで再構成だとか違う英霊召喚だとかが主流だった中で、これほどチャレンジング(原作では設定だけしか語られていないので)なものはないと思いましたよ。そしてその期待にたぐわぬ面白さを提供されたら、そら信者もできるわと納得。分量も多く、展開も面白く、キャラごとに焦点を当てた書き分けも見事ときたら、もうあとは読みふけるしか無いでしょ。

しかもロンドンだけかと思ってたら、冬木のことについても言及しているじゃありませんか。あぁ、もうUBWラストを迎えた後に必ず残る遺恨をこの場でこういう形で精算するとは、もはや計画通りではないですけど、読者にほれほれ読みたかろうって迫ってるのも同じですよ。いいだろう読んでやろうじゃないか!! と思い立ったばかりに深夜2時間ほど夢中にしてしまったのはもはやいい思い出。翌日寝坊したことすらも覚えているあたり、おいおいどれだけ影響受けてるんだってなります。

とにもかくにもこの作品、原作へのリスペクト具合が半端無いんですよ。士郎の特異性に対する新たな考察しかり、切嗣が残した魔術の鍛錬法しかり、うまい具合に原作のエピソードを利用して、面白いストーリー展開をしてきます。革鎧ネタを見た時は、本当この人何者だと(笑) 2012年現在、Fate/Zeroという作品が出てきて、多少設定で食い違うところも出ていますが、それでもなお独自の解釈と考察でここまで作品を深掘りできているのは素晴らしいとしか言葉がでません。基本的には士郎たちの日常を描いているわけですが、たまに出てくる魔術考察ではっとさせられるあたり、作者の着眼点の鋭さが垣間見えます。

それにしても士郎、凛、そしてセイバーがロンドンに渡ったら、本当にこんな生活があったんでしょうね。ルヴィアが加わり、士郎は厄介事に首をつっこみ、凛がお金を消費して、セイバーが苦労する。もう一連の流れが手に取るように頭の中でイメージできるあたり、この作品が自身に及ぼした影響の凄まじさを物語っています。ただまぁ、ドタバタしてて魔術師らしいところがあまり見つからないのはどうなんでしょうねw もちろん事件に巻き込まれる時は魔術関係でしっかり補正されるんですが、それ以外の日常はどうにも微笑ましい生活しか思い浮かばない(笑)

きっとこれからもこいつらはこんな風に生きていくんだろうな。少なくとも自分の心のなかでは彼ら(彼女ら)の日常がドラえもんばりに延々と続いています。たまに喧嘩して、たまに苦労して、たまに悲しんで、たまに喜び騒いで、そしてたまに人生を謳歌して。刹那の日常から永劫な未来まで、変わらぬ愛をこめて。もー、お前ら最高だっ。