2012年9月8日土曜日

SSメモ:正義の烙印

正義の烙印(朔夜)

二次創作というのにこの救いようの無さだよ。
ある意味で原作Fate/Zeroの暗い空気をよくぞまぁこんなにも丁寧に再現したものだ。これ書いてる当時、Zeroという作品は話の筋しか情報なかったはず(多分)なのに、ここまでダークな雰囲気を表現できているのは脱帽モノです。

SSのコンセプト的には第4次聖杯戦争にエミヤシロウを混ぜてみた、というありふれたものですが、異様にこの切嗣とエミヤのコンビがマッチしている。こいつらに奇襲させたら厄介にもほどがあるぜぇい……。どこかの作品の考察で切嗣は真っ向から戦車で突入するセイバーを召喚してしまったがゆえに戦争に負けたと考察しているサイトがあったが、このSS読んでるとあながちその考察も間違っていないように思えてくる。改めてこいつほど正攻法が似合わない男もいないと実感。

実際のところ物語終盤にかかると、FateのSSを読み慣れているせいか、おおよそこの話の終わらせかたが見えてくるんですよね。結局のところエミヤは皮肉屋で冷酷で捻くれていて、それでいて優しくて不器用でひたむきに頑固で……そんなエミヤが切嗣のことを恨んでいるとはいえ救おうとしないわけないんですよ。
本筋では結局直接的にそうした描写をしませんでしたが、もうさりげなく……そっと背を押すくらいさり気なくアイリスフィールとの過去回想を入れることで、エミヤの内心を表現するこのギミック。もうこんなの反則ですよ。あぁ、その場面がまじまじと想像できてしまう。アイリスフィールの冷たくなった手が、硝煙に焼けたエミヤの頬が、有り得るはずのない母と子の邂逅が。


「もっと良く顔を見せて。私は貴方を知らないけれど、あの人の子であるのなら。私にとっても、大事な息子よ」(正義の烙印 act.11 より)


雪解け水も流れだすような暖かさと言い知れない寂寥感の混ざったこの感覚を、なんと呼べばいいんでしょうね。冒頭で救いがないと言いましたが、ある意味ではこういうところに作者の思い描く救いがあるのかもしれません。犠牲という烙印を押すことでしか正義を示せない不器用な二人。一方はこのSS内で息子に理想を奪うことで、一方はこのSSではない遠い並行世界で理想を叶える過程を無駄なんかじゃないと己に諭されることで、それぞれ答えを得るわけです。
あー、そういう意味では救いようのない物語でもないのか……? どうなんでしょうね、ぶっちゃけ生存者数変わんないけど、生存者の状況が原作よりほんの少し救いようがあるわけですから、原作ほど救いようがないわけじゃあないですけど、それでも生存者数変わんないあたりやっぱりこれ救いよう無い物語だよなぁ。

しかし、昨今Fate/Zeroの文庫化&アニメ化で人気があがり、多くの二次創作が出た中でこのSSを見返すといろいろと感慨深いものがある。実は一部の原作キャラクター削ってオリジナルキャラクターを大量に投入しているわけですが、まぁ作品の生い立ちと時代を考えればそれも仕方のないことですよね。ただしライダーやらウェイバーといった主要人気キャラは変わっていないのでご安心を。あ、でもCOOOOOOOLな旦那とかいないな。まぁ、あいつらはいいか(

しかしそのために所謂第4次の最大の見所であるイスカンダルVSギルガメッシュがないとか(ただし代わりとなるウェイバー成長要素はある)、アルトリアとランスロットのやりとりがないとか、結構重要な要素が抜けているんですが、おそらくそうしたものは続編の「烙印を継ぐ者たち」で補完するんでしょうね。うばぁ、早く続編が読みたい。なにせこの続編、期待いっぱいな出だしと上記の要素を予期させるサーヴァントの面々が登場しており、さっそう期待するなと言う方が無理なほど。うがー、続編はまだかーーー!!!

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