小さな魔女と野良犬騎士(如月雑賀)
心温まるハートフルファンタジーともいうべきなのか。なんだろう、実にいい意味でネット小説らしいファンタジーものなんですよね、この「小さな魔女と野良犬騎士」という作品は。アクのない文体に丁寧なシナリオ、一人一人全力で生きている魅力的なキャラクター。本当どれひとつとっても間違いなく5段階評価で4以上はつくでしょう。突き抜けて面白いわけではないけど、安定して読める作品という意味では、たぶん近年の作品でトップレベルだと勝手に思っています。もちろんシリアスで、理不尽に人が死んで、ハーレムで、ご都合主義な展開もある程度は存在しますが、だからこそ逆にファンタジーに対する安心感というか、「そうそうファンタジーにこういうの求めていたんだ」と思えるというか。
このSSの主人公であるアルトは暗い過去を持ち、戦闘力はかなり高く、でも普段は力を露見させないというネット小説のテンプレの極みを地でいっていますが、作中ではお人好し、ロリコン、ヒモ、ニートと作中で散々罵られているため、正直あんまりそういうところ意識しません。というか読み終わって初めて気づいたレベルです。初見だと間違い無くろくでもない「だめんず」なんですよね、こいつ。実際作中の行動の半分くらいは本当にろくでもないし。ただやる時は本当にやるもので、言葉や行動、そして己の信念を曲げないその矜持が凄まじくかっこいいです。ここまで男らしい、少年漫画の主人公にも劣らない「熱さ」を秘めている主人公ってあんまりいないんですよね。だからこそ余計に普段のダメ具合が目立つわけですが(笑)
そんなアルトを取り巻くヒロインたちですが、これまた揃いも揃ってだめんず好きというダメっぷり。おそらくメインヒロインである魔女のロザリンやニートに餌をやる宿屋の看板娘カトレアとか、これもう完全にだめですわー。世話する喜び覚えちゃってるレベル。冒険者ギルドのサブマスタープリシアとかもはや信者。もちろん本性とかを知った上で主人公とヒロインたちの関係を眺めてみると確かに惚れるのもしょうがないなーと思うわけですが、知らない人から見たら勤勉で真面目で心優しいあの人が、どうしてこうなった状態。ちなみに余談ですが、そういう人ほどだめんずにハマる原因は、たいてい抑圧された自己表現に対する尊敬(自分はダメな部分を人に見せられないのに、あの人は誰にでもオープン。自分にできないこと平然とやってのける、すごい→すてき→抱いての連鎖)らしいですね。思い当たる人は注意しましょう。
さておき。個人的にこういうヒロインってなにげに好きなんですよね。正確には主人公とヒロインの関係性といいますか。ヒロインそれぞれにちゃんとアルトのことを好きになる理由があるんですよ。直接お話として記述されてるものもあれば、匂わせる描写でとどめているだけのものもあるため、完全にそうだとは言えませんが、たぶん読んでいる感じでは単なるいい男に惚れた、ではないんですよね。あれだ、やさしいから惚れたとかそうじゃなくて、やさしいところもだめなところもたまに辛い顔するところもかっこいいところも全部ひっくるめてこの人がいいから惚れたって感じです。どれか一つの要素でも欠けていたら、きっと惚れていないんだろうなぁ。
矜持、というのがたぶんこのSSのキーワードです。様々な人物が自らの矜持を誇り、それに従って対立し、ぶつかりあって決着を付ける。こうした一連の展開は目が離せないどころか、その先はどうなっているのか、何が矜持を支えているのか、のめり込んでしまうほど。特に第一部最後の人の命に関する矜持の持ちようは、どちらも正しいようで、どちらも間違っているようで、善悪の二極論でこの世は語れないんだなぁとしみじみ感じてしまいます。現在第二部に入って、いろいろ世界観が明らかになってきたため、これから先の展開にかなり期待しています。ついに国内だけでなく国外にも話が及び、べたですが主人公の過去に触れる内容も出てきて、まさにこれからと言ったところ。……ただ不安があるとすれば、経験上このあたりがネット小説の中でも最もエタりやすくなる時期なので、作者の如月さんにはぜひ踏ん張って欲しいです。
2013年3月11日月曜日
2013年2月27日水曜日
SSメモ:遊戯王GXへ、現実より
遊戯王GXへ、現実より(葦束良日)
にじふぁん時代は何回か読み返していた作品。最近になってまた発見したので、改めて読み返してみたらだいぶ伏線やら過去やらがいろいろ回収されていたので、これはもう感想を書かずにはいられないと思いたち、衝動書き。あれ、なんか前にも似たようなことやったきがする。。。
はてさて、そんなことはさておき。遊戯王モノですよ、奥さん。あの原作からして破茶目茶で、アニメに至っては超展開満載な、だけれどもそれを楽しむ術さえ身につければ全てが面白くて仕方のないあの国民的カードゲーム(?)の遊戯王ですよ。なんでこんなテンション高いのかというと、自分が元OCG(現実のカードゲーム)のプレイヤーでして、何回かいろんな大会に出たりしてたからなんですよねー。そんなわけでして、人一倍遊戯王には関心があるわけです。
……が。
いかんせん、この手のジャンルを書くのってすごく難しいわけで。SSってゲームやスポーツを描写するのがすごく大変なんですよね。漫画だと一目見ればわかることを、延々と文字で描写しなければならないので。しかもこと遊戯王みたいなゲームになると、カードの効果とかも解説しないといけないわけで、読者が戸惑ってしまうわけです。正直並の遊戯王SSを見ても、大抵の読者はつまんないなーと思うかもしれません。さらにいえば、遊戯王は遊戯王デュエルモンスターズ、遊戯王GX、遊戯王5D's、遊戯王ZEXALなどアニメだけでも4つあり、全て総合すると登場人物は通常の作品の4倍、5倍にも膨れ上がり、カードの種類にいたってはOCG、アニメ、そして漫画それぞれのオリジナルのものがあるため、もはや覚えきれません。さすがカードの販売数でギネス記録を保有するだけのことはあります。……こう書いてて今更なわけですが、読者にも筆者にも結構厳しい作品ですよね。
とりあえず遊戯王自体の話はいいとして、SSの話に移りましょう。
このSSはアニメ第2シリーズである遊戯王GXを中心に話が展開するものです。たぶん一番二次創作SSの中でも多い設定なんじゃないでしょうか。同時にGX知らないよ、という人も多いですが。トリップ、オリ主という要素があるため毛嫌いする人も多いかもしれませんが、正直遊戯王SSの中でもトップクラスに面白いと思います。主人公の遠也がシンクロ召喚(アニメ第3シリーズの遊戯王5D'sで登場する新しいモンスター召喚方法)のテスターという設定もなかなかおいしい。この設定だけでGX時代にはなかったシンクロ要素をうまく溶けこませることに成功させています。
ストーリーは基本的にアニメ準拠ですね。原作主人公の十代がデュエルする場所で、代わりに遠也がデュエルすることも多いですが、それでも充分十代にも見せ場があります。遠也は俗にゆう親友ポジションに落ち着いているのかな? なので辺にでしゃばることもないし、十代や他のキャラが埋もれるということもないです。むしろ原作より三沢が輝いているのである意味では原作以上にキャラがいきいきしているかもしれません。
話が中盤になってくると、主人公の過去話や5D'sとの絡みが出てくるので非常に盛り上がります。ここでそのキャラか!!と思わせられることまちがいなし。事実、自分はびっくりしました。そして同時にやられた、とも思いました。そういう設定でそういうストーリー展開の方法があったのかと、ただただ関心しましたね。
現状は遊戯王GXの3期(1期が一年生、2期が二年生、3期が三年生前半)なんですが、これがまた重い話の連続なんですよね。鬱展開あり、闇堕ちあり、多方面同時ストーリー展開あり、というアニメ史上でも稀にみるシリアス具合。ある意味では自分がもっとも好きなパートなんですけど、ここをどう描ききるのか非常に気になっています。またついに主人公の過去話も明かされ、初代主人公遊戯の圧倒的強さも解禁されたので、これからどうなっていくのか全く話が読めません。今後目の話せない展開になることが容易に想像されるので、これからちょっとずつ覗いていきたいと思います。
にじふぁん時代は何回か読み返していた作品。最近になってまた発見したので、改めて読み返してみたらだいぶ伏線やら過去やらがいろいろ回収されていたので、これはもう感想を書かずにはいられないと思いたち、衝動書き。あれ、なんか前にも似たようなことやったきがする。。。
はてさて、そんなことはさておき。遊戯王モノですよ、奥さん。あの原作からして破茶目茶で、アニメに至っては超展開満載な、だけれどもそれを楽しむ術さえ身につければ全てが面白くて仕方のないあの国民的カードゲーム(?)の遊戯王ですよ。なんでこんなテンション高いのかというと、自分が元OCG(現実のカードゲーム)のプレイヤーでして、何回かいろんな大会に出たりしてたからなんですよねー。そんなわけでして、人一倍遊戯王には関心があるわけです。
……が。
いかんせん、この手のジャンルを書くのってすごく難しいわけで。SSってゲームやスポーツを描写するのがすごく大変なんですよね。漫画だと一目見ればわかることを、延々と文字で描写しなければならないので。しかもこと遊戯王みたいなゲームになると、カードの効果とかも解説しないといけないわけで、読者が戸惑ってしまうわけです。正直並の遊戯王SSを見ても、大抵の読者はつまんないなーと思うかもしれません。さらにいえば、遊戯王は遊戯王デュエルモンスターズ、遊戯王GX、遊戯王5D's、遊戯王ZEXALなどアニメだけでも4つあり、全て総合すると登場人物は通常の作品の4倍、5倍にも膨れ上がり、カードの種類にいたってはOCG、アニメ、そして漫画それぞれのオリジナルのものがあるため、もはや覚えきれません。さすがカードの販売数でギネス記録を保有するだけのことはあります。……こう書いてて今更なわけですが、読者にも筆者にも結構厳しい作品ですよね。
とりあえず遊戯王自体の話はいいとして、SSの話に移りましょう。
このSSはアニメ第2シリーズである遊戯王GXを中心に話が展開するものです。たぶん一番二次創作SSの中でも多い設定なんじゃないでしょうか。同時にGX知らないよ、という人も多いですが。トリップ、オリ主という要素があるため毛嫌いする人も多いかもしれませんが、正直遊戯王SSの中でもトップクラスに面白いと思います。主人公の遠也がシンクロ召喚(アニメ第3シリーズの遊戯王5D'sで登場する新しいモンスター召喚方法)のテスターという設定もなかなかおいしい。この設定だけでGX時代にはなかったシンクロ要素をうまく溶けこませることに成功させています。
ストーリーは基本的にアニメ準拠ですね。原作主人公の十代がデュエルする場所で、代わりに遠也がデュエルすることも多いですが、それでも充分十代にも見せ場があります。遠也は俗にゆう親友ポジションに落ち着いているのかな? なので辺にでしゃばることもないし、十代や他のキャラが埋もれるということもないです。むしろ原作より三沢が輝いているのである意味では原作以上にキャラがいきいきしているかもしれません。
話が中盤になってくると、主人公の過去話や5D'sとの絡みが出てくるので非常に盛り上がります。ここでそのキャラか!!と思わせられることまちがいなし。事実、自分はびっくりしました。そして同時にやられた、とも思いました。そういう設定でそういうストーリー展開の方法があったのかと、ただただ関心しましたね。
現状は遊戯王GXの3期(1期が一年生、2期が二年生、3期が三年生前半)なんですが、これがまた重い話の連続なんですよね。鬱展開あり、闇堕ちあり、多方面同時ストーリー展開あり、というアニメ史上でも稀にみるシリアス具合。ある意味では自分がもっとも好きなパートなんですけど、ここをどう描ききるのか非常に気になっています。またついに主人公の過去話も明かされ、初代主人公遊戯の圧倒的強さも解禁されたので、これからどうなっていくのか全く話が読めません。今後目の話せない展開になることが容易に想像されるので、これからちょっとずつ覗いていきたいと思います。
2013年2月15日金曜日
SSメモ:陶都物語
陶都物語(まふまふ)
ふぃく……しょん? だよね?
え、あれ、これ現実には起こっていないよね? うん、そうだ。そのはずだ。時代小説でもあるまいし、そもそも転生モノなのだからそれが当たり前なはずなんだ。
なのに、SSが醸し出すこの異様なまでの現実感はどうしたものか。
まるで経済小説の大作を見ている気分ですね。いや、本当びっくりです。沈まぬ太陽とか不毛地帯とか、見るだけで現実のものと錯覚しそうになる書籍はあれど、SSでこれほどまでにリアルに迫った転生モノとかほぼ見ないんじゃないでしょうか。それもそのはずで作者の方、完全にこれ下調べどころか、もはや歴史研究の域に達しているほどに資料を読み漁ってるよ。これほどまでに情熱を注ぎ込んでひたむきに一つの物語に向き合っているのだから、それが面白くないわけがない。
舞台は江戸末期、明治で花咲く美濃焼の本元に転生した主人公の草太が内政チートではなく陶磁器チートで成り上がる(?)物語……のはず。なんというかチートはチートなんですが、あんまりSUGEEE系ではないんですよね。もちろんそういう要素も満載なはずなんですが、他の作品に比べて地味というか。それもそのはずで舞台はおちゃらけた異世界なんかではなく江戸。江戸といえば人権宣言びっくりの人権無視社会ですよ。そもそも差別格差万歳の時代で、人情や義理と言った要素はあるものの、そんなもの物語として成り立つほどに珍しい時代です。そしてそれ以上に立場の縦割り社会(武士の子は武士)がひどく、商人の家に生まれなければ商売すら成り立たない状況。そんな世界でやっていくためには、本当足元からこつこつやっていくしかないんですよね。異世界なら普通飛ばされる描写も、こちらでは非常に丁寧に泥臭く描いているので、本当その苦労が忍ばれます。異世界で現代知識披露してポンと金出るのがいかにご都合主義か。
この作品で語らずには居られないのが主人公の草太以上に、草太が執着している陶磁器。作者の陶磁器に関する知識が本当に半端ない。もはやその道の人としか思えないほどにリアルなんだけど、どうなんだろうか。江戸時代にはほぼ美濃焼の価値なんてあってないようなものなんですけど、有田焼や瀬戸物なんか現在海外でも評価されているのを見ると、まさにこの時代にブランド化に成功すればノリタケやウェッジウッド顔負けのモノができるでしょうね。草太がそこに活路を見出していくあたりはさすが元中小企業経営者というべきか。ただ問題はブランドの概念がまだこの時代では世界的に見ても薄いこと。果たしてそれを克服できるか否か。
草太が6歳にして胃潰瘍(原因:ストレス)の恐怖に怯えながら出世していく姿は見てて実に気持ちいいんですが、その裏で初恋の女の子との別れやお家騒動があったりと、いろいろ切なさのグラデーションがかかっています。これらの要素がまた随所でいい働きをしているおかげで、単なるなり上がり物語ではなく、まさしく努力の末に駆け登っている物語という印象が出てきて、続きが読みたくなってきます。しかし成り上がっているのは間違いないんですが、成り上がり過ぎると江戸幕府と共倒れというなんとも歯痒い状況が気になります。この調子でいけば明治維新起こらないんじゃね? という疑惑が浮き出てるのがすごく怖い……。
草太自身のキャラは実に汎用的な主人公だし、周りのキャラクターも取り立てて特筆するほど濃いわけではないんですが、するりと物語に溶け込んでこちらにその存在感を植え付けているのは作者の力量か。現代の安易に記号化されたキャラクターはほとんどおらず、ある意味ではそれがつまらないほどに生々しい。通訳の人なんてそれこそまさにこんな人がいたんだろうなぁ、と思うくらい行動がリアルで、うっかり草太が言ってしまう英語を誰に学んだのか即座に聞きに行くほど。優秀な人ってたしかにこういう行動するんですよねぇ……。こういう些細なところでもリアルを感じるからこそ、この物語全体が非常に繊細で生々しい現実感を醸しだすのかもしれません。
ふぃく……しょん? だよね?
え、あれ、これ現実には起こっていないよね? うん、そうだ。そのはずだ。時代小説でもあるまいし、そもそも転生モノなのだからそれが当たり前なはずなんだ。
なのに、SSが醸し出すこの異様なまでの現実感はどうしたものか。
まるで経済小説の大作を見ている気分ですね。いや、本当びっくりです。沈まぬ太陽とか不毛地帯とか、見るだけで現実のものと錯覚しそうになる書籍はあれど、SSでこれほどまでにリアルに迫った転生モノとかほぼ見ないんじゃないでしょうか。それもそのはずで作者の方、完全にこれ下調べどころか、もはや歴史研究の域に達しているほどに資料を読み漁ってるよ。これほどまでに情熱を注ぎ込んでひたむきに一つの物語に向き合っているのだから、それが面白くないわけがない。
舞台は江戸末期、明治で花咲く美濃焼の本元に転生した主人公の草太が内政チートではなく陶磁器チートで成り上がる(?)物語……のはず。なんというかチートはチートなんですが、あんまりSUGEEE系ではないんですよね。もちろんそういう要素も満載なはずなんですが、他の作品に比べて地味というか。それもそのはずで舞台はおちゃらけた異世界なんかではなく江戸。江戸といえば人権宣言びっくりの人権無視社会ですよ。そもそも差別格差万歳の時代で、人情や義理と言った要素はあるものの、そんなもの物語として成り立つほどに珍しい時代です。そしてそれ以上に立場の縦割り社会(武士の子は武士)がひどく、商人の家に生まれなければ商売すら成り立たない状況。そんな世界でやっていくためには、本当足元からこつこつやっていくしかないんですよね。異世界なら普通飛ばされる描写も、こちらでは非常に丁寧に泥臭く描いているので、本当その苦労が忍ばれます。異世界で現代知識披露してポンと金出るのがいかにご都合主義か。
この作品で語らずには居られないのが主人公の草太以上に、草太が執着している陶磁器。作者の陶磁器に関する知識が本当に半端ない。もはやその道の人としか思えないほどにリアルなんだけど、どうなんだろうか。江戸時代にはほぼ美濃焼の価値なんてあってないようなものなんですけど、有田焼や瀬戸物なんか現在海外でも評価されているのを見ると、まさにこの時代にブランド化に成功すればノリタケやウェッジウッド顔負けのモノができるでしょうね。草太がそこに活路を見出していくあたりはさすが元中小企業経営者というべきか。ただ問題はブランドの概念がまだこの時代では世界的に見ても薄いこと。果たしてそれを克服できるか否か。
草太が6歳にして胃潰瘍(原因:ストレス)の恐怖に怯えながら出世していく姿は見てて実に気持ちいいんですが、その裏で初恋の女の子との別れやお家騒動があったりと、いろいろ切なさのグラデーションがかかっています。これらの要素がまた随所でいい働きをしているおかげで、単なるなり上がり物語ではなく、まさしく努力の末に駆け登っている物語という印象が出てきて、続きが読みたくなってきます。しかし成り上がっているのは間違いないんですが、成り上がり過ぎると江戸幕府と共倒れというなんとも歯痒い状況が気になります。この調子でいけば明治維新起こらないんじゃね? という疑惑が浮き出てるのがすごく怖い……。
草太自身のキャラは実に汎用的な主人公だし、周りのキャラクターも取り立てて特筆するほど濃いわけではないんですが、するりと物語に溶け込んでこちらにその存在感を植え付けているのは作者の力量か。現代の安易に記号化されたキャラクターはほとんどおらず、ある意味ではそれがつまらないほどに生々しい。通訳の人なんてそれこそまさにこんな人がいたんだろうなぁ、と思うくらい行動がリアルで、うっかり草太が言ってしまう英語を誰に学んだのか即座に聞きに行くほど。優秀な人ってたしかにこういう行動するんですよねぇ……。こういう些細なところでもリアルを感じるからこそ、この物語全体が非常に繊細で生々しい現実感を醸しだすのかもしれません。
2013年1月8日火曜日
SSメモ:真・恋姫無双【凡将伝】
真・恋姫無双【凡将伝】(一ノ瀬)
おいおいおい、なんだこの斬新な試みは!
……というのが当初この恋姫SSを読んだ時の感想でした。その試みの正体とは読者のコメントによって主人公のステータスや物語の展開が変わるという一風変わったもの。実際の所、連載もののSSで読者の感想が物語を左右することってほとんどないと思うんですよね。それはプロット云々以前にSSとは作者が書きたいものを書いているからであり、読者は「作る」人ではなくあくまでも「読む」人だからなのです。ゆえに、読者の反応を気にして作者は読者の欲求をみたすようなSSを書くことはあっても、読者がSSに干渉できるわけがないのです。
そう、そのはずなのに。
読者のコメント数でオリ主の能力値が変化して、鬱ルートな小説プロットの展開から抜け出すとかどういうことだ(笑)
作中で説明されているので、敢えてここで具体的な内容を伝えることはしませんが、簡単にいえば「リア充爆発」という言葉を読者から100以上もらうことで、SSがよりリア充的な展開になるという仕組みです。初めてこの仕組みが明かされた時は本当なんぞこれ、と唖然ですよ。同時にすごくわくわくしましたね。なんて意欲的なSSなんだと、そしてある意味でこれこそがweb2.0時代の双方向性あるネット小説としての完成形なんじゃないかと、ひどく感動した覚えがあります。
敢えて恋姫という作品でこの形をとったというところにも注目したい所。外史の観測者に関する考察に始まり、この物語の仕組みへ絡めて、だから主人公へ影響を与えることができるんだという話しの筋は、非常に説得力のあるものとして受け入れることができましたね。これもひとえに作者の一ノ瀬氏の筆力でしょう。物語の内容としても出来が素晴らしく、袁家陣営のよさが本当によく描かれています。特に麗羽様の王っぷりなどは半端無く魅力的に描写されており、ある意味ではこんなの麗羽様ではない!と否定されても仕方ないながらも、個人的には全然ありなキャラクター改変だと思います。ただでさえ面白い物語に、さらに読者のコメントやアンケートなどがあるのだから、これはもう手放しで賞賛する他ありませんよ。
それと忘れてはいけないのがこのSSに登場する魅力的なオリキャラたち。恋姫†無双で出ていない武将はまだまだたくさんいるので、武将の名前を借りたオリキャラを作るのは意外と簡単なわけですが、いかんせん本編のキャラに比べて影の薄いことが多いのがほとんどの恋姫SSの現状だと思います。しかしこのSSではこのオリキャラたちがまた濃いの何の……。っていうかAAで自己紹介するのやめれ、笑い殺す気か(笑) もちろん本編キャラも黙ってはいません。袁家の二枚看板なんてこれほど活躍したSSがあるのかと思うくらい、きちんと武将として描かれていますし、なにより客観的な視点における一刀君のリアルチート状態の忌々しさをこれ以上ないくらい見物できますw 何がすごいって、ここの一刀君は何も原作から外れたことはしていないのに、嫌われっぷりがひどいということ。いや、そりゃまぁ、これまで触れ合ってきたキャラクターが一刀君と触れ合うだけで落ちていく様子を見せられると、なんだかなぁという気にもなりますよ。でもこれが原作であり、オリ主の居るほうが異質なんだよなぁ。そのことをオリ主自身が自覚していますし。アンチやヘイト以外のSSでこれほど一刀君が嫌われているのも珍しい。
物語は現在反董卓連合の佳境。今後どう物語が転がっていくか。読者一人一人の意思表示で、未来はどんどん変わっていきます。ぜひいろんな人に、この感覚を楽しんでほしいですね。
これほどのSSを書いてくださっている一ノ瀬氏に感謝を。
おいおいおい、なんだこの斬新な試みは!
……というのが当初この恋姫SSを読んだ時の感想でした。その試みの正体とは読者のコメントによって主人公のステータスや物語の展開が変わるという一風変わったもの。実際の所、連載もののSSで読者の感想が物語を左右することってほとんどないと思うんですよね。それはプロット云々以前にSSとは作者が書きたいものを書いているからであり、読者は「作る」人ではなくあくまでも「読む」人だからなのです。ゆえに、読者の反応を気にして作者は読者の欲求をみたすようなSSを書くことはあっても、読者がSSに干渉できるわけがないのです。
そう、そのはずなのに。
読者のコメント数でオリ主の能力値が変化して、鬱ルートな小説プロットの展開から抜け出すとかどういうことだ(笑)
作中で説明されているので、敢えてここで具体的な内容を伝えることはしませんが、簡単にいえば「リア充爆発」という言葉を読者から100以上もらうことで、SSがよりリア充的な展開になるという仕組みです。初めてこの仕組みが明かされた時は本当なんぞこれ、と唖然ですよ。同時にすごくわくわくしましたね。なんて意欲的なSSなんだと、そしてある意味でこれこそがweb2.0時代の双方向性あるネット小説としての完成形なんじゃないかと、ひどく感動した覚えがあります。
敢えて恋姫という作品でこの形をとったというところにも注目したい所。外史の観測者に関する考察に始まり、この物語の仕組みへ絡めて、だから主人公へ影響を与えることができるんだという話しの筋は、非常に説得力のあるものとして受け入れることができましたね。これもひとえに作者の一ノ瀬氏の筆力でしょう。物語の内容としても出来が素晴らしく、袁家陣営のよさが本当によく描かれています。特に麗羽様の王っぷりなどは半端無く魅力的に描写されており、ある意味ではこんなの麗羽様ではない!と否定されても仕方ないながらも、個人的には全然ありなキャラクター改変だと思います。ただでさえ面白い物語に、さらに読者のコメントやアンケートなどがあるのだから、これはもう手放しで賞賛する他ありませんよ。
それと忘れてはいけないのがこのSSに登場する魅力的なオリキャラたち。恋姫†無双で出ていない武将はまだまだたくさんいるので、武将の名前を借りたオリキャラを作るのは意外と簡単なわけですが、いかんせん本編のキャラに比べて影の薄いことが多いのがほとんどの恋姫SSの現状だと思います。しかしこのSSではこのオリキャラたちがまた濃いの何の……。っていうかAAで自己紹介するのやめれ、笑い殺す気か(笑) もちろん本編キャラも黙ってはいません。袁家の二枚看板なんてこれほど活躍したSSがあるのかと思うくらい、きちんと武将として描かれていますし、なにより客観的な視点における一刀君のリアルチート状態の忌々しさをこれ以上ないくらい見物できますw 何がすごいって、ここの一刀君は何も原作から外れたことはしていないのに、嫌われっぷりがひどいということ。いや、そりゃまぁ、これまで触れ合ってきたキャラクターが一刀君と触れ合うだけで落ちていく様子を見せられると、なんだかなぁという気にもなりますよ。でもこれが原作であり、オリ主の居るほうが異質なんだよなぁ。そのことをオリ主自身が自覚していますし。アンチやヘイト以外のSSでこれほど一刀君が嫌われているのも珍しい。
物語は現在反董卓連合の佳境。今後どう物語が転がっていくか。読者一人一人の意思表示で、未来はどんどん変わっていきます。ぜひいろんな人に、この感覚を楽しんでほしいですね。
これほどのSSを書いてくださっている一ノ瀬氏に感謝を。
2012年11月28日水曜日
SSメモ:ログ・ホライズン
ログ・ホライズン(橙乃ままれ)
もしもゲームの世界に入り込んだら。
わりかしこのSSはネトゲものというかVR(正確には違うけど)とかで紹介されることが多いんですが、個人的には本質は上にある通りゲーム世界に迷い込んだら、だと思うんですよね。
というのも、ネトゲものにしては正直いろいろ腑に落ちないところが多いからです。定番のデス・ゲームものでもなく、リアルとの駆け引きがあるわけでもない。ネトゲという異世界に突入したにしてはあまりに現実を引っ張っており、かといって転移にしてはあまりにゲームじみている。いまいちどのジャンルもしっくりこなくて、なんなんだろうなーとぼんやり考えた所、最終的に行き着いたのがゲーム世界に突入というジャンルでした。
正直なところあれですよ。思い至ったときは、そういえばそんなジャンルもあったなと思うくらい、昔のジャンル過ぎて望郷の念が立ち込めたくらいです(笑) いやしかし、もはや二次創作系列の作品以外では絶滅したと思われるこのジャンルを、よくも敢えてやろうと思えたものです。商業作品だと編集さんにプロット提出した段階で「VRだと差別化が難しいので他のにしましょう」とか「独自のゲームだと世界観の説明がしつこくなる」とか言われてまず間違いなく企画倒れでしょうね。読んでみないとこの面白さは中々伝わらないものですよ。
さてさて作品のジャンルはいいとして肝心の中身についてなんですが、これまたなんというかお手本のようなキャラクターの作りと話の展開です。ちょっといじわるな言い方をすれば歯車のようなキャラと機械仕掛けの物語、とでもいいましょうか。とにかく主人公の腹ぐろ眼鏡ことシロエを初め、多くのキャラクターが本当に見事なまでに記号化された特徴をもっており、それらが活かされた話しの進め方がされるため、いい意味でこのキャラは現実にはいないし、この話はフィクションだという実感が沸くんですよ。フィクションだとわかっているからある程度の棘が立つキャラの言動も目くじらを立てずに済むし、ご都合主義的な展開にもカタルシスを感じることができます。すばらしいポジショニングですね。
お話としてはネットゲームの世界で主人公たちが活躍するという形なんですが、レベルの暴力やらレベルを上げて物理で殴るやらがないため大変すばらしい出来です。ゲームならではの面白さに加え、ゲーム固有の概念を用いた問題解決法の提示、そしてそこにさらりと稼ぎ方やネゴシエーションの秘訣を入れてくるあたり、さすがの橙乃ままれ氏であると言わざるを得ません。話の後半になってくると今度は格差・自治・経済といったキーワードを入れてくるという贅沢さ。話しのスケールも大きくなってくるし、世界の謎にも迫ってくるし、恋の行方も波瀾な予感だし、いろいろと目が離せない状況です。
それにしてもこの橙乃ままれ氏である。
代表作の「まおゆう」からわかっていたことではありますが、一筋縄ではいかない物語の展開は舌を巻く勢いで毎度驚かされます。前半はそうでもないんですが後半からの群像劇っぷりに磨きがかかると、拍車をかけるように物語が面白くなるのはいったいどういうトリックなんだろうか。王道に一風変わった独自解釈を付け加え、世界観を広めた上で改めて王道に戻るという一連の流れに関しては、もはや崇拝するレベル。このSSの今後の展開が非常に気になります。ただいかんせん橙乃ままれ氏本人の忙しさが尋常じゃなさそうなところが難点。首を長くして更新を待ち続けたい一作。
あ、ちなみに文庫版も出てるのでネットがダメな人はぜひ。あと公式ホームページでコミカライズ情報だったり外伝(元は小説家になろうで掲載していた)だったりが出ているので、ファンの人は要チェックかも。
もしもゲームの世界に入り込んだら。
わりかしこのSSはネトゲものというかVR(正確には違うけど)とかで紹介されることが多いんですが、個人的には本質は上にある通りゲーム世界に迷い込んだら、だと思うんですよね。
というのも、ネトゲものにしては正直いろいろ腑に落ちないところが多いからです。定番のデス・ゲームものでもなく、リアルとの駆け引きがあるわけでもない。ネトゲという異世界に突入したにしてはあまりに現実を引っ張っており、かといって転移にしてはあまりにゲームじみている。いまいちどのジャンルもしっくりこなくて、なんなんだろうなーとぼんやり考えた所、最終的に行き着いたのがゲーム世界に突入というジャンルでした。
正直なところあれですよ。思い至ったときは、そういえばそんなジャンルもあったなと思うくらい、昔のジャンル過ぎて望郷の念が立ち込めたくらいです(笑) いやしかし、もはや二次創作系列の作品以外では絶滅したと思われるこのジャンルを、よくも敢えてやろうと思えたものです。商業作品だと編集さんにプロット提出した段階で「VRだと差別化が難しいので他のにしましょう」とか「独自のゲームだと世界観の説明がしつこくなる」とか言われてまず間違いなく企画倒れでしょうね。読んでみないとこの面白さは中々伝わらないものですよ。
さてさて作品のジャンルはいいとして肝心の中身についてなんですが、これまたなんというかお手本のようなキャラクターの作りと話の展開です。ちょっといじわるな言い方をすれば歯車のようなキャラと機械仕掛けの物語、とでもいいましょうか。とにかく主人公の腹ぐろ眼鏡ことシロエを初め、多くのキャラクターが本当に見事なまでに記号化された特徴をもっており、それらが活かされた話しの進め方がされるため、いい意味でこのキャラは現実にはいないし、この話はフィクションだという実感が沸くんですよ。フィクションだとわかっているからある程度の棘が立つキャラの言動も目くじらを立てずに済むし、ご都合主義的な展開にもカタルシスを感じることができます。すばらしいポジショニングですね。
お話としてはネットゲームの世界で主人公たちが活躍するという形なんですが、レベルの暴力やらレベルを上げて物理で殴るやらがないため大変すばらしい出来です。ゲームならではの面白さに加え、ゲーム固有の概念を用いた問題解決法の提示、そしてそこにさらりと稼ぎ方やネゴシエーションの秘訣を入れてくるあたり、さすがの橙乃ままれ氏であると言わざるを得ません。話の後半になってくると今度は格差・自治・経済といったキーワードを入れてくるという贅沢さ。話しのスケールも大きくなってくるし、世界の謎にも迫ってくるし、恋の行方も波瀾な予感だし、いろいろと目が離せない状況です。
それにしてもこの橙乃ままれ氏である。
代表作の「まおゆう」からわかっていたことではありますが、一筋縄ではいかない物語の展開は舌を巻く勢いで毎度驚かされます。前半はそうでもないんですが後半からの群像劇っぷりに磨きがかかると、拍車をかけるように物語が面白くなるのはいったいどういうトリックなんだろうか。王道に一風変わった独自解釈を付け加え、世界観を広めた上で改めて王道に戻るという一連の流れに関しては、もはや崇拝するレベル。このSSの今後の展開が非常に気になります。ただいかんせん橙乃ままれ氏本人の忙しさが尋常じゃなさそうなところが難点。首を長くして更新を待ち続けたい一作。
あ、ちなみに文庫版も出てるのでネットがダメな人はぜひ。あと公式ホームページでコミカライズ情報だったり外伝(元は小説家になろうで掲載していた)だったりが出ているので、ファンの人は要チェックかも。
2012年9月20日木曜日
SSメモ: UBW~倫敦魔術綺譚
UBW~倫敦魔術綺譚(冬霞 / 夏色)
あぁ、この表面上はほのぼのとしていて、けれど裏で薄氷上に立っているような緊張感の混じったなんとも言えない空気感。まさしく原作Fateの日常パートを読んでいる時に感じた安心さと不安さであり、だからこそ否応なしにも話の先にパンドラの匣があることを予感させます。たとえ原作後のストーリーといえど、やはりFateSSの空気はこういうのでなければ。
UBWアフターを描くというのは、そもそもFateSSにおいてNGな行為として捉えられることが多いんですよね。というのもFateSS全盛期において「Fate/In Britain」と「Brilliant Years(へみるworldというサイトで掲載していたが、現在は観閲不可)」というUBWアフターを描いた2つの超大作SSがあり、この2つが双璧を成して他のSSを寄せ付けないほど人気を博してしまったからなんです。そのせいか読者もUBWアフターSSに求めるハードルがぐーんと上がり、生半可なSSを読んでも面白いと感じないどころか、見向きすらしないという状態になっているわけです。作者も作者で上記二作品を見ることなくUBWアフターを書く人はほとんどおらず、そして見たら見たでレベルの高さを目の当たりにして自然と書くのを自重してしまうという。
そういう状況だからこそ、もうこの手のSSは二度と見れないかなーと内心とても残念に思っていたんですが、そんな時にこのSSの登場ですよ。UBWアフター作品と銘打ってるわけですから、そりゃもう目が惹かれます。惹かれないわけがありません。どれどれちょいと顔を拝ませてもらおうかと自信たっぷりにスコップ携えて寄ってみれば、敷地を跨いで地面を踏んだ途端にずぶずぶと足が面白さという地面の穴に嵌り込み、スコップなぞもってんじゃねぇ!(若本ボイス)とこちらを飲み込んでくるではありませんか。これはもう見る他無い。というより抜け出せない。
かぁーっ、もうなんというかオリ主紫遙くんの不幸っぷりがたまんない。士郎って基本的に不幸なことでも大抵前向きに捉えてそれって不幸なの?を地で言ってくるから時々ものすごくイラっとくるんですが、この紫遙くんはむしろ「いいよいいよ……どうせ不幸だよ……」と半ば諦めがついてるので凹む様子の楽しいこと。やるときゃやるのに、なぜこうにもヘタレなのか。まぁ、あの蒼崎姉妹の元でこき使われていれば誰だってこうなるか。
凛もルヴィアも相変わらずで何より。この二人はどのSSでも本当混ぜるな危険状態ですよね。もっともこういう関係は羨ましい限りですが。ぶっちゃけ「似て非なる」からこそ「非なる」部分でわーわー物言いするんだけで、結局似てるところをお互い認めてるあたり似たもの同士って羨ましいなぁって思います。ある意味でエミヤと士郎もそんな関係だと思うんですよね。結局互いに嫌悪する理由がそこだったわけだし。もちろん片方が理想論で、片方が達観論なことは否定しませんが。でもその違いさえなければ、あの二人なにげに良いコンビだと思うわけですよ。誰かそんなSS書いてくれないかなー。二人がこたつで落ち着いて将来について話し合うSS。題名は流行りを取り入れて『士郎「おれ、正義の味方になる」エミヤ「たわけ」』で。
しかしよく書いたよなぁ、これ。
チャレンジ精神満載というか、真っ向からFateという作品を見つめなおしているというか。敢えてこの題材で書こうとするあたり、どこかに作者の伝えたい思いがあると思うんですけどねぇ。それは続きを読んでから、ということでしょうか。まるで昔ながらの家に現代の匠の技を取り入れるかのごとく、昔ながらのアフターと近年流行りのオリ主トリップを組み合わせた至高の一品SS。これぞまさに劇的ビューティフルビフォー&エクセレントアフター。もう古参FateSS読みとしては大歓喜ですよ。
惜しむべきはにじファン閉鎖騒動に巻き込まれて、あれだけの長編を今はちょっとずつ改稿しながら理想郷に投稿しているというところ。ぐぬぬ、見直したいけど見直せないこのもどかしさと、ちょっとずつ作品が更新されていくこの期待でドキムネな感じ。作者の焦らしプレイスキルは非常に高いと見た。
追記(2013年3月11日)
ハーメルンにて改定前の作品の投稿を確認。
UBW~倫敦魔術綺譚 (未改訂版)
あぁ、この表面上はほのぼのとしていて、けれど裏で薄氷上に立っているような緊張感の混じったなんとも言えない空気感。まさしく原作Fateの日常パートを読んでいる時に感じた安心さと不安さであり、だからこそ否応なしにも話の先にパンドラの匣があることを予感させます。たとえ原作後のストーリーといえど、やはりFateSSの空気はこういうのでなければ。
UBWアフターを描くというのは、そもそもFateSSにおいてNGな行為として捉えられることが多いんですよね。というのもFateSS全盛期において「Fate/In Britain」と「Brilliant Years(へみるworldというサイトで掲載していたが、現在は観閲不可)」というUBWアフターを描いた2つの超大作SSがあり、この2つが双璧を成して他のSSを寄せ付けないほど人気を博してしまったからなんです。そのせいか読者もUBWアフターSSに求めるハードルがぐーんと上がり、生半可なSSを読んでも面白いと感じないどころか、見向きすらしないという状態になっているわけです。作者も作者で上記二作品を見ることなくUBWアフターを書く人はほとんどおらず、そして見たら見たでレベルの高さを目の当たりにして自然と書くのを自重してしまうという。
そういう状況だからこそ、もうこの手のSSは二度と見れないかなーと内心とても残念に思っていたんですが、そんな時にこのSSの登場ですよ。UBWアフター作品と銘打ってるわけですから、そりゃもう目が惹かれます。惹かれないわけがありません。どれどれちょいと顔を拝ませてもらおうかと自信たっぷりにスコップ携えて寄ってみれば、敷地を跨いで地面を踏んだ途端にずぶずぶと足が面白さという地面の穴に嵌り込み、スコップなぞもってんじゃねぇ!(若本ボイス)とこちらを飲み込んでくるではありませんか。これはもう見る他無い。というより抜け出せない。
かぁーっ、もうなんというかオリ主紫遙くんの不幸っぷりがたまんない。士郎って基本的に不幸なことでも大抵前向きに捉えてそれって不幸なの?を地で言ってくるから時々ものすごくイラっとくるんですが、この紫遙くんはむしろ「いいよいいよ……どうせ不幸だよ……」と半ば諦めがついてるので凹む様子の楽しいこと。やるときゃやるのに、なぜこうにもヘタレなのか。まぁ、あの蒼崎姉妹の元でこき使われていれば誰だってこうなるか。
凛もルヴィアも相変わらずで何より。この二人はどのSSでも本当混ぜるな危険状態ですよね。もっともこういう関係は羨ましい限りですが。ぶっちゃけ「似て非なる」からこそ「非なる」部分でわーわー物言いするんだけで、結局似てるところをお互い認めてるあたり似たもの同士って羨ましいなぁって思います。ある意味でエミヤと士郎もそんな関係だと思うんですよね。結局互いに嫌悪する理由がそこだったわけだし。もちろん片方が理想論で、片方が達観論なことは否定しませんが。でもその違いさえなければ、あの二人なにげに良いコンビだと思うわけですよ。誰かそんなSS書いてくれないかなー。二人がこたつで落ち着いて将来について話し合うSS。題名は流行りを取り入れて『士郎「おれ、正義の味方になる」エミヤ「たわけ」』で。
しかしよく書いたよなぁ、これ。
チャレンジ精神満載というか、真っ向からFateという作品を見つめなおしているというか。敢えてこの題材で書こうとするあたり、どこかに作者の伝えたい思いがあると思うんですけどねぇ。それは続きを読んでから、ということでしょうか。まるで昔ながらの家に現代の匠の技を取り入れるかのごとく、昔ながらのアフターと近年流行りのオリ主トリップを組み合わせた至高の一品SS。これぞまさに劇的ビューティフルビフォー&エクセレントアフター。もう古参FateSS読みとしては大歓喜ですよ。
惜しむべきはにじファン閉鎖騒動に巻き込まれて、あれだけの長編を今はちょっとずつ改稿しながら理想郷に投稿しているというところ。ぐぬぬ、見直したいけど見直せないこのもどかしさと、ちょっとずつ作品が更新されていくこの期待でドキムネな感じ。作者の焦らしプレイスキルは非常に高いと見た。
追記(2013年3月11日)
ハーメルンにて改定前の作品の投稿を確認。
UBW~倫敦魔術綺譚 (未改訂版)
2012年9月19日水曜日
SSメモ:真・恋姫†無双で部下をやってます
真・恋姫†無双で部下をやってます(BBB)
駄目人間に仕える快感を教えてくれる恋姫SS。
……いや、冗談ですからね? そんな「何このマゾ、ひくわぁ……」って視線で見ないでくださいよ。ビクンビクン。
とまぁ、それはさておき。
恋姫SSの中にはこのSSのようにたまーに袁紹とか袁術とかに仕えるSSがあるんですよねー。主人公が一刀くんかオリ主かで別れるかは別として。最初の頃はそうしたSSを敬遠していたんですが、このSSを読んで以来、すっかり駄目人間の素晴らしさに気が付きましたよ。オリ主モノなのにすっきり読めたのも大きいかもしれません。なんというか、ダメなのが逆にいいんですよねー。自分がしっかりしなきゃという意識と、どうにもならない現実の狭間で苦悩する姿に、共感を覚えるというか、人生そんなうまく進まないよねーという気持ちが湧いてくるというか。
主人公玄胞のほどよいチートさもこれまたいい具合に働いています。内政に干渉して成果はあがったものの、腐った役人をところかまわず放り出したせいで逆に自分が苦労することになってるあたり、なんか人間らしいお茶目さを感じる。人を見る目がいいという特徴はあるものの……はてさて、いろいろ伏線がはられていて、これは果たして人を見る目がいいのか……はたまた識っているのか……。ある意味でこの程度でぼかされると、非常に気になって続きが読みたくなるんですよね。明らかな伏線とわかりつつも、早くその伏線を回収してほしいと思うのなら、それは既に伏線の役割を果たしたと言ってもいいんじゃないでしょうか。
このSSのいいところは、ダメ下(ダメな人間の下の略)に仕える多くのSSが君主を諭して本来のキャラから外そうとすることが多いのに対し、きっちりそのあたりは線をひいてちゃんと原作の麗羽というキャラを崩さずに描いていることですね。いやぁ、まさしくこの作品の麗羽は麗羽だ。まごうことなき麗羽であり、玄胞が必死で交渉していることを努力の甲斐も虚しく0にしてしまうあたり、原作とほぼ変わりない馬鹿で自尊心溢れ、曹操を敵視している。麗羽の違和感が本当皆無なわけで、変な過去を捏造したり、よくわからない解釈をしたりしないところが、また評価を上げるポイント。麗羽はあの馬鹿っぽさがいいんですし、ダメ下に仕える系のSSなのに、駄目人間を更正させるのはよくないと思うんです、うん。
ストーリーの方は、今が完全に佳境。
というか、正直話数的にここまで連載している割に、これほど展開の遅いSSも珍しいものです。以前紹介した「とんでも外史」なんかはそもそも黄巾の乱が集結してませんが、それと同じくらい遅いです。序盤がかなり丁寧で、この時点からいろんなキャラを動かしているのですからそうなるのも当然なんですが。
しかし、ようやく反董卓連合に入り、ようやく玄胞の反撃が始まり、ようやく玄胞の招待がちらほら見えてくる、というところでにじファン閉鎖騒動に巻き込まれたので、うぉおおおおいってリアルで叫びますよ、そりゃ。
そろそろまた更新こないかなー、と待ってはいるんですが、このままエターナルなコースに突入しそうで怖い気持ちもあります。長期停滞の後の1話更新は本当こわい。BBBさん、頑張ってほしいな。せめて反董卓連合編だけでも終わらせてくれれば。いや、終わらなくてもいい、玄胞の正体だけでも戦争中に明かしてくれれば。いや、それすらもどうでもよくて、お願いだから麗羽のダメっぷりをもっと見せ(ry
駄目人間に仕える快感を教えてくれる恋姫SS。
……いや、冗談ですからね? そんな「何このマゾ、ひくわぁ……」って視線で見ないでくださいよ。ビクンビクン。
とまぁ、それはさておき。
恋姫SSの中にはこのSSのようにたまーに袁紹とか袁術とかに仕えるSSがあるんですよねー。主人公が一刀くんかオリ主かで別れるかは別として。最初の頃はそうしたSSを敬遠していたんですが、このSSを読んで以来、すっかり駄目人間の素晴らしさに気が付きましたよ。オリ主モノなのにすっきり読めたのも大きいかもしれません。なんというか、ダメなのが逆にいいんですよねー。自分がしっかりしなきゃという意識と、どうにもならない現実の狭間で苦悩する姿に、共感を覚えるというか、人生そんなうまく進まないよねーという気持ちが湧いてくるというか。
主人公玄胞のほどよいチートさもこれまたいい具合に働いています。内政に干渉して成果はあがったものの、腐った役人をところかまわず放り出したせいで逆に自分が苦労することになってるあたり、なんか人間らしいお茶目さを感じる。人を見る目がいいという特徴はあるものの……はてさて、いろいろ伏線がはられていて、これは果たして人を見る目がいいのか……はたまた識っているのか……。ある意味でこの程度でぼかされると、非常に気になって続きが読みたくなるんですよね。明らかな伏線とわかりつつも、早くその伏線を回収してほしいと思うのなら、それは既に伏線の役割を果たしたと言ってもいいんじゃないでしょうか。
このSSのいいところは、ダメ下(ダメな人間の下の略)に仕える多くのSSが君主を諭して本来のキャラから外そうとすることが多いのに対し、きっちりそのあたりは線をひいてちゃんと原作の麗羽というキャラを崩さずに描いていることですね。いやぁ、まさしくこの作品の麗羽は麗羽だ。まごうことなき麗羽であり、玄胞が必死で交渉していることを努力の甲斐も虚しく0にしてしまうあたり、原作とほぼ変わりない馬鹿で自尊心溢れ、曹操を敵視している。麗羽の違和感が本当皆無なわけで、変な過去を捏造したり、よくわからない解釈をしたりしないところが、また評価を上げるポイント。麗羽はあの馬鹿っぽさがいいんですし、ダメ下に仕える系のSSなのに、駄目人間を更正させるのはよくないと思うんです、うん。
ストーリーの方は、今が完全に佳境。
というか、正直話数的にここまで連載している割に、これほど展開の遅いSSも珍しいものです。以前紹介した「とんでも外史」なんかはそもそも黄巾の乱が集結してませんが、それと同じくらい遅いです。序盤がかなり丁寧で、この時点からいろんなキャラを動かしているのですからそうなるのも当然なんですが。
しかし、ようやく反董卓連合に入り、ようやく玄胞の反撃が始まり、ようやく玄胞の招待がちらほら見えてくる、というところでにじファン閉鎖騒動に巻き込まれたので、うぉおおおおいってリアルで叫びますよ、そりゃ。
そろそろまた更新こないかなー、と待ってはいるんですが、このままエターナルなコースに突入しそうで怖い気持ちもあります。長期停滞の後の1話更新は本当こわい。BBBさん、頑張ってほしいな。せめて反董卓連合編だけでも終わらせてくれれば。いや、終わらなくてもいい、玄胞の正体だけでも戦争中に明かしてくれれば。いや、それすらもどうでもよくて、お願いだから麗羽のダメっぷりをもっと見せ(ry
2012年9月18日火曜日
SSメモ:俺の人生ヘルモード
俺の人生ヘルモード(侘寂山葵)
トリップものがいつもいつも作者の願望を映したような希望溢れる生ぬるい作品になると思うなよ!!と言わんばかりの、のっけからの鬼畜仕様……なはずだったわけですが、いつの間にかご都合主義に変わり気がつけば割りと強い力と心強い相棒を手に入れて、これから無双状態か!と思いきや、やっぱりそんなことなかったぜと次々試練が待ち受け、でも案外展開がテンプレート化してきてて、はいはいヘルモードヘルモード(笑)と安易にSSを読み進めていたら、底なし沼どころか奈落の穴に落とされてすいませんと全力で焼き土下座しているわけで、つまり何が言いたいかというと……。
パネェ。。。
あかんだろ、これ。俺の人生どころか皆の人生ヘルモードだよ。人生3回くらいやり直してもこの状況に放り出されたら間違いなく死ぬ自身があるよ。つーか一話にして主人公意外トリップ者全滅ってどうよ。テンプレどおり魔物に襲われてみました☆みたいなかわいいものじゃなくて巨人と虫に食い散らされたり、人間ボールにされたり、15禁タグの威力が遺憾なく発揮され、しかも死なないために立ち向かうとかではなくて、黒い沼に身を隠してひたすら耐えるとか、それなんてファンタジー……。
始まりからヘルモード全開で飛ばしまくってて大丈夫かよと思いましたが、ワシのヘルモードは108式まであるので大丈夫だ問題ない状態。問題ありすぎだ。所詮序盤のヘルさなんてただの前菜だったわけですよ。魔物が直に向かってくるだけましで、そもそも気づかないうちに捕食されたり、生きたまま栄養分にされたりがざらになる後半を見ると、あぁなんと平和な世界……じゃねぇよ……マジで……。
主人公のメイくん、よくもまぁ耐えれたものだわ……。いくら相棒が励ましてくれたり、いい仲間に恵まれたりしたとはいえ、こんなダンジョンに何度も潜り込む勇気とか湧かないって。しかもなんか黒幕っぽい人物に目をつけられて、狙われるはめになってるし。人生の難易度が変わり過ぎなのに、よくついて行けるなぁ。
メイだけではなく、さりげなくメイの仲間も度胸とか覚悟が相当あるんですよね。相棒たるドリーがメイと一蓮托生な覚悟をしていることはもちろん、ドランやリーンもメイを信頼しているし自分のできることをわきまえている。無理についていくことはせず、自分にできることをやるし、メイもそれを求めているものだから、こいつらのチームワークはすごい。だからこそ、そのチームワークが発揮できない状況においての絶望感が凄まじいわけですが。
しかもこのお話、ただただヘルモードがすごいだけではなくて、話の広げ方もすごい。起伏にとんだ展開とはまさにこのこと。ダンジョンの成り立ちも深く考えられているし、それに関するエピソードを外伝にすることで、徐々に徐々に本編が真実に近づき空気が張り詰めていく様子も直に味わえるし、何より物語の落とし方が異常にうまい。どこまで読者を絶望に叩きこめば気が済むんだ……。
とりあえず現在の最新話は、絶望から軽く持ち上げている状況なので、次の話以降どれだけ下に突き落とされるか楽しみです。
トリップものがいつもいつも作者の願望を映したような希望溢れる生ぬるい作品になると思うなよ!!と言わんばかりの、のっけからの鬼畜仕様……なはずだったわけですが、いつの間にかご都合主義に変わり気がつけば割りと強い力と心強い相棒を手に入れて、これから無双状態か!と思いきや、やっぱりそんなことなかったぜと次々試練が待ち受け、でも案外展開がテンプレート化してきてて、はいはいヘルモードヘルモード(笑)と安易にSSを読み進めていたら、底なし沼どころか奈落の穴に落とされてすいませんと全力で焼き土下座しているわけで、つまり何が言いたいかというと……。
パネェ。。。
あかんだろ、これ。俺の人生どころか皆の人生ヘルモードだよ。人生3回くらいやり直してもこの状況に放り出されたら間違いなく死ぬ自身があるよ。つーか一話にして主人公意外トリップ者全滅ってどうよ。テンプレどおり魔物に襲われてみました☆みたいなかわいいものじゃなくて巨人と虫に食い散らされたり、人間ボールにされたり、15禁タグの威力が遺憾なく発揮され、しかも死なないために立ち向かうとかではなくて、黒い沼に身を隠してひたすら耐えるとか、それなんてファンタジー……。
始まりからヘルモード全開で飛ばしまくってて大丈夫かよと思いましたが、ワシのヘルモードは108式まであるので大丈夫だ問題ない状態。問題ありすぎだ。所詮序盤のヘルさなんてただの前菜だったわけですよ。魔物が直に向かってくるだけましで、そもそも気づかないうちに捕食されたり、生きたまま栄養分にされたりがざらになる後半を見ると、あぁなんと平和な世界……じゃねぇよ……マジで……。
主人公のメイくん、よくもまぁ耐えれたものだわ……。いくら相棒が励ましてくれたり、いい仲間に恵まれたりしたとはいえ、こんなダンジョンに何度も潜り込む勇気とか湧かないって。しかもなんか黒幕っぽい人物に目をつけられて、狙われるはめになってるし。人生の難易度が変わり過ぎなのに、よくついて行けるなぁ。
メイだけではなく、さりげなくメイの仲間も度胸とか覚悟が相当あるんですよね。相棒たるドリーがメイと一蓮托生な覚悟をしていることはもちろん、ドランやリーンもメイを信頼しているし自分のできることをわきまえている。無理についていくことはせず、自分にできることをやるし、メイもそれを求めているものだから、こいつらのチームワークはすごい。だからこそ、そのチームワークが発揮できない状況においての絶望感が凄まじいわけですが。
しかもこのお話、ただただヘルモードがすごいだけではなくて、話の広げ方もすごい。起伏にとんだ展開とはまさにこのこと。ダンジョンの成り立ちも深く考えられているし、それに関するエピソードを外伝にすることで、徐々に徐々に本編が真実に近づき空気が張り詰めていく様子も直に味わえるし、何より物語の落とし方が異常にうまい。どこまで読者を絶望に叩きこめば気が済むんだ……。
とりあえず現在の最新話は、絶望から軽く持ち上げている状況なので、次の話以降どれだけ下に突き落とされるか楽しみです。
2012年9月16日日曜日
SSメモ:竜殺しと龍喰らい
竜殺しと竜喰らい(三上康明)
見事なまでの真正面からの正拳突き。
いやー、すごい。真っ向から全力で一切の妥協なくブレもなく、ただただこういう物語が書きたいんだという作者の思いが、一つのSSとなりガツンと心を打ってきます。くはー、これは堪える。体の芯が痺れるほどの衝撃。敵わないなぁ。
題名どおりこのSSの世界には竜がいて、竜を殺す人たちがいて、そして殺した竜を解体する人たちがいます。基本竜が圧倒的に強いわけですが、人が力を合わせればかろうじて戦えるレベル、といったところ。戦闘がだいたい命がけなあたり、お察しください。
それにしてもこの世界の竜、ファンタジーらしくない。
すべての竜種が毒をもっているところとか、子供は襲わないとか、人を殺すと土くれに変えるとか。なんかこう竜の眼! とかブレス! とか げきりん!! とかもうちょっとなんかないのかよ、と。敢えて竜という存在の設定を既存概念から外しているあたり、正直何かの伏線があるのだろうと訝しんでしまうわけですが、後のお楽しみなんですかねえ。
そして実は竜を討伐する側も、あんまりファンタジーらしくない(笑)
一般的なファンタジー世界で竜を倒すとき、なんか魔法使いがサポートしたり、剣士が必死に斬りかかったり、あるいは扱いがぞんざいなものに至るとなんか魔法で消し飛ばされたり、剣士が一瞬で戦闘終わらせたりと、一言で言えばザ・モブって感じなんですよね。危ないと言われている割に主人公サイドからすると倒せる、みたいな。
が、しかしこのSSではことがそう単純ではなく、斥候だして竜の特性を探り、爆薬と香料で竜を混乱させて、最後に武器で倒す、と。なるほど、たしかに現実的に考えて、強大なものに挑む際は相手の弱点を突き、弱らせて仕留めるよな、と感心しています。どっかの兵法書の基本みたいな形でのってそうな、なんというか合理的な戦い方ですよね。ファンタジーとしてはどうなのと思いますが(笑)
お手本みたいなSS、とはちょっと言い過ぎかもしれませんが、少なくとも多くの物書きにとって見習うべきところはたくさんあると思えました。序盤のつかみ、物語の展開、次の話しへの引き方、どれをとっても上手いという他ありません。もちろん粗とも言えるべき場所はたくさんあり、対立構造の様子がちょっとあっさりしていたり、クライマックスの盛り上げ方とかもう少し工夫できるんじゃないかと思ったり、欠点を上げればきりがありません。某理想郷やなろうでこの作品を掲載すると、おそらく感想欄に批判コメが殺到するんじゃないでしょうか。
しかし、そんな親の仇を探すみたいに目くじら立てている感想なんてどうでもいいんです。重要なのは自分の思いに正直になって書きたいシーンを書けているかどうかです。安易に「あいつは心の中で生きている」だとか、「憎しみは憎しみを生むだけだ」とかありきたりな表現に逃げるのではなく、自分の言葉で、自分の思いで、書きたいものを書きさえすればいいんです。このSSはそういった点において、多くの作品のお手本になるのではないでしょうか。
読者に媚を売るなんてしなくていい、他作品の都合のいい解決法なんてもってのほか。SSなんですから、もっと自分の欲望に忠実になって、このシーンが書きたかったんだ! と堂々胸を張っていればいいんですよ。SS読みの人たちなんて意識してるにせよ無意識にせよ、そういう作者の思いを見たいがためにSSを読んでるはずなんですから。
最近読んだSSの中で、もっとも繰り返し読みたいと感じましたねー。ここまで作者が自分の欲求に従って書いたSSも滅多にありませんから、SSの書き手にとってはとてもいい上達材料になるのではないかと思います。もし創作に煮詰まっている人がいたらぜひ。
見事なまでの真正面からの正拳突き。
いやー、すごい。真っ向から全力で一切の妥協なくブレもなく、ただただこういう物語が書きたいんだという作者の思いが、一つのSSとなりガツンと心を打ってきます。くはー、これは堪える。体の芯が痺れるほどの衝撃。敵わないなぁ。
題名どおりこのSSの世界には竜がいて、竜を殺す人たちがいて、そして殺した竜を解体する人たちがいます。基本竜が圧倒的に強いわけですが、人が力を合わせればかろうじて戦えるレベル、といったところ。戦闘がだいたい命がけなあたり、お察しください。
それにしてもこの世界の竜、ファンタジーらしくない。
すべての竜種が毒をもっているところとか、子供は襲わないとか、人を殺すと土くれに変えるとか。なんかこう竜の眼! とかブレス! とか げきりん!! とかもうちょっとなんかないのかよ、と。敢えて竜という存在の設定を既存概念から外しているあたり、正直何かの伏線があるのだろうと訝しんでしまうわけですが、後のお楽しみなんですかねえ。
そして実は竜を討伐する側も、あんまりファンタジーらしくない(笑)
一般的なファンタジー世界で竜を倒すとき、なんか魔法使いがサポートしたり、剣士が必死に斬りかかったり、あるいは扱いがぞんざいなものに至るとなんか魔法で消し飛ばされたり、剣士が一瞬で戦闘終わらせたりと、一言で言えばザ・モブって感じなんですよね。危ないと言われている割に主人公サイドからすると倒せる、みたいな。
が、しかしこのSSではことがそう単純ではなく、斥候だして竜の特性を探り、爆薬と香料で竜を混乱させて、最後に武器で倒す、と。なるほど、たしかに現実的に考えて、強大なものに挑む際は相手の弱点を突き、弱らせて仕留めるよな、と感心しています。どっかの兵法書の基本みたいな形でのってそうな、なんというか合理的な戦い方ですよね。ファンタジーとしてはどうなのと思いますが(笑)
お手本みたいなSS、とはちょっと言い過ぎかもしれませんが、少なくとも多くの物書きにとって見習うべきところはたくさんあると思えました。序盤のつかみ、物語の展開、次の話しへの引き方、どれをとっても上手いという他ありません。もちろん粗とも言えるべき場所はたくさんあり、対立構造の様子がちょっとあっさりしていたり、クライマックスの盛り上げ方とかもう少し工夫できるんじゃないかと思ったり、欠点を上げればきりがありません。某理想郷やなろうでこの作品を掲載すると、おそらく感想欄に批判コメが殺到するんじゃないでしょうか。
しかし、そんな親の仇を探すみたいに目くじら立てている感想なんてどうでもいいんです。重要なのは自分の思いに正直になって書きたいシーンを書けているかどうかです。安易に「あいつは心の中で生きている」だとか、「憎しみは憎しみを生むだけだ」とかありきたりな表現に逃げるのではなく、自分の言葉で、自分の思いで、書きたいものを書きさえすればいいんです。このSSはそういった点において、多くの作品のお手本になるのではないでしょうか。
読者に媚を売るなんてしなくていい、他作品の都合のいい解決法なんてもってのほか。SSなんですから、もっと自分の欲望に忠実になって、このシーンが書きたかったんだ! と堂々胸を張っていればいいんですよ。SS読みの人たちなんて意識してるにせよ無意識にせよ、そういう作者の思いを見たいがためにSSを読んでるはずなんですから。
最近読んだSSの中で、もっとも繰り返し読みたいと感じましたねー。ここまで作者が自分の欲求に従って書いたSSも滅多にありませんから、SSの書き手にとってはとてもいい上達材料になるのではないかと思います。もし創作に煮詰まっている人がいたらぜひ。
2012年9月14日金曜日
SSメモ:捻れた運命と真理
捻れた運命と真理(わかな)
なんとも珍しい組み合わせを見たものだ。
鋼の錬金術師とFateって等価交換など多少の共通点はあるにせよ、お互いがお互いに確固たる世界観を築いているせいで、組み合わせると齟齬どころか致命的に世界観丸潰してアヒルがネギしょってやってきたという違和感満載状態になると思ってたんですけど……。
いやはや驚いた。
これほどまでに見事に組み合わされているクロスオーバーSSも実に珍しい。パワーバランスすら大きく違う両作品をこれほど鮮やかにミックスさせて、それでいて原作のシリアスさを壊さずストーリーが進行できるとは、ちょっとどころではなく尋常ならざるぐらい作者のバランス感覚優れてます。トランプタワーの上でベイブレード回してるようなものですよ。ちなみに試しにできるかどうかやってみたんですが、トランプタワーすら組み立てられませんでした。不器用なことくらい知ってたさっ(泣)
それはさておき。
凛とアーチャー(ついでにルビー)がハガレン世界に来たらというIFストーリーというのが本作の特徴なわけですが、これがまた馴染む馴染む。エドたちはもちろん、ロイやらスカーやらとの話し合いも違和感なく進むあたり何か間違ってるはずなんですけどねぇ……。それもこれも、両者ともにかなり柔軟な思考をしているからなんでしょう。
凛たちは平行世界とかいろいろ知識と概念があるから納得できたり許容できたりするんですが、本来エドワードたちはそうした考えをもっていませんから、なんのこっちゃと理解できないと思うんですよね。ただそこにあり得ないなんてあり得ない、という言葉をグリードから聞いていることもあり、うまい具合下地が重なって、受け入れることができていると。そしてさらに魔術が自分たちには使えないと言われても、発想は使えるかもしれないと貪欲になれるあたり、こいつらやっぱりどんな作品でも主人公だよ、と思わされます。思考の柔軟性でいえば、ひょっとすると凛よりも(昔の知識にこだわっているため)エドたちの方が強いのかもしれませんね。なまじそれは知識がないからかもしれませんが。
一番肝心なことは、こうした場面を作者が違和感を感じさせずにすべてを描ききっていることなんですよね。エドワードが賢者の石を使う際の葛藤とか、アメストリスの異常に対する凛の反応とか、もう原作以上に原作らしいんですよ。何度もしつこいかもしれませんが、この作品を混ぜ合わせるバランス感覚って本当天性のものだと思うんですよ。間違いなく混ぜるのが難しい作品であり、それはこのクロスオーバーを描いているSSがほぼないことからも明らかなんですが、その上でこれだけうまく物語を展開できるのは、作者の力量がいかに優れているか示しています。
なんというか、このSSって無理のないように物語が在るんですよね。
FateというSSがクロスオーバーする場合、往々にしてエミヤが世界わたって活躍したと思えば敵に別のFateキャラが出てきたり、世界の修正力とかで英霊が出てきたりと、正直その展開はちょっと無理がないかと感じるんですよ。たとえどんな理由があったところで別作品別世界に型月作品の魔術概念をそのまま適用しているあたり、違和感を拭えないというか。
ところがこのSSに関してはそういった兆候があんまり見られないし、むしろアーチャーまったく活躍してないしどっちかって言えばボロボロだし……そういうわけで、今のところ安心してハガレン世界を楽しめるんですよね。
作者のわかなさんにはぜひ完結まで頑張って欲しいところ。クロスオーバーSSの見本として、いろんな人にその面白さが伝わるといいな。
なんとも珍しい組み合わせを見たものだ。
鋼の錬金術師とFateって等価交換など多少の共通点はあるにせよ、お互いがお互いに確固たる世界観を築いているせいで、組み合わせると齟齬どころか致命的に世界観丸潰してアヒルがネギしょってやってきたという違和感満載状態になると思ってたんですけど……。
いやはや驚いた。
これほどまでに見事に組み合わされているクロスオーバーSSも実に珍しい。パワーバランスすら大きく違う両作品をこれほど鮮やかにミックスさせて、それでいて原作のシリアスさを壊さずストーリーが進行できるとは、ちょっとどころではなく尋常ならざるぐらい作者のバランス感覚優れてます。トランプタワーの上でベイブレード回してるようなものですよ。ちなみに試しにできるかどうかやってみたんですが、トランプタワーすら組み立てられませんでした。不器用なことくらい知ってたさっ(泣)
それはさておき。
凛とアーチャー(ついでにルビー)がハガレン世界に来たらというIFストーリーというのが本作の特徴なわけですが、これがまた馴染む馴染む。エドたちはもちろん、ロイやらスカーやらとの話し合いも違和感なく進むあたり何か間違ってるはずなんですけどねぇ……。それもこれも、両者ともにかなり柔軟な思考をしているからなんでしょう。
凛たちは平行世界とかいろいろ知識と概念があるから納得できたり許容できたりするんですが、本来エドワードたちはそうした考えをもっていませんから、なんのこっちゃと理解できないと思うんですよね。ただそこにあり得ないなんてあり得ない、という言葉をグリードから聞いていることもあり、うまい具合下地が重なって、受け入れることができていると。そしてさらに魔術が自分たちには使えないと言われても、発想は使えるかもしれないと貪欲になれるあたり、こいつらやっぱりどんな作品でも主人公だよ、と思わされます。思考の柔軟性でいえば、ひょっとすると凛よりも(昔の知識にこだわっているため)エドたちの方が強いのかもしれませんね。なまじそれは知識がないからかもしれませんが。
一番肝心なことは、こうした場面を作者が違和感を感じさせずにすべてを描ききっていることなんですよね。エドワードが賢者の石を使う際の葛藤とか、アメストリスの異常に対する凛の反応とか、もう原作以上に原作らしいんですよ。何度もしつこいかもしれませんが、この作品を混ぜ合わせるバランス感覚って本当天性のものだと思うんですよ。間違いなく混ぜるのが難しい作品であり、それはこのクロスオーバーを描いているSSがほぼないことからも明らかなんですが、その上でこれだけうまく物語を展開できるのは、作者の力量がいかに優れているか示しています。
なんというか、このSSって無理のないように物語が在るんですよね。
FateというSSがクロスオーバーする場合、往々にしてエミヤが世界わたって活躍したと思えば敵に別のFateキャラが出てきたり、世界の修正力とかで英霊が出てきたりと、正直その展開はちょっと無理がないかと感じるんですよ。たとえどんな理由があったところで別作品別世界に型月作品の魔術概念をそのまま適用しているあたり、違和感を拭えないというか。
ところがこのSSに関してはそういった兆候があんまり見られないし、むしろアーチャーまったく活躍してないしどっちかって言えばボロボロだし……そういうわけで、今のところ安心してハガレン世界を楽しめるんですよね。
作者のわかなさんにはぜひ完結まで頑張って欲しいところ。クロスオーバーSSの見本として、いろんな人にその面白さが伝わるといいな。
2012年9月13日木曜日
SSメモ:未来は見果てぬ旅路の先
未来は見果てぬ旅路の先(彩守るせろ)
これまたなんというか……。
敢えて紅茶で例えるなら、このSSはダージリンのファーストフラッシュでしょうね。セカンドに比べて渋く、オータムに比べて風味がなく、人によっては青臭いとさえ蔑まれる若々しい茶葉の香りは、まさにこの物語にしっくりくる。
若いっていいなぁ。
このSSの主人公であるリョウくん、本当若くて一途で人一倍思いやりがあって、そして人一倍「医学」に関しては頑固なんですよね。自分はどうなってもいいし、どう思われてもいい。だけど、人の病を治すことに関しては、誰がなんと言おうと、それこそ宗教的禁忌を犯してでも、譲らない。たとえそれが誰かとぶつかり合う事になっても。
実際、医学の発達が薄い世界で、しかも宗教が信じられている世界で、異端の考えを持ち込むのは非常に困難なことです。こっちの世界の歴史的に見ても、地動説が受け入れられるようになった経緯や進化論が認められるようになる途中で、多くの人々が宗教信仰の前に苦渋をなめさせられています。そして科学が発達した今尚、それらの事象を信じない人もたくさんいます。そんなことわかった上で、それでも自分の医学への思いを貫くのだから、大したものだ。
もっとスマートで理性的で妥協的で協力的な選択ができるはずなんですよ。仕方がないと割りきって、届かないと諦めて、見なかったことにすることだってできる。それがたぶん賢い生き方で、楽な生き方なんですけど、リョウは決してそれをしない。馬鹿だとわかっていても、自分の思いを貫くことを選ぶ。人はそれを愚者と呼ぶかもしれないけれど、そこに何か若い頃に忘れてしまった大切なものがある気がして、無意識のうちに彼の行動に惹かれ、見守り、草陰の中からそっと応援してしまう。
主人公であるリョウも魅力的なんですが、それ以上に彼の周辺にいるキャラクターが魅力的なんですよね。友人であるヘイ、仄かな好意を寄せるカリア、その他よき理解者たるヘイル夫妻やクレイなど、揃いも揃ってこいつら見ててハラハラするリョウを支えているんですよね。まるで子の成長を見守る大人のように、時に叱り導き、時に叱咤し励まし、時に喜び笑い合う。そうやって彼らが傍にいるからこそ、リョウはこの世界に降り立って、自らの夢を折られても、まっすぐ前を向いて進めるんでしょう。
いやぁ、ひたすらに丁寧だわ、このSS。
若い人の理想と、諦めない思考と、応援したくなる周りの気持ちを、段階立ててゆっくりしっかり描いているせいか、臨場感あふれる、とまではいかないものの作中時間と各キャラクターの感情の進行が手に取るようにわかるんですよ。医学という一つのテーマに対して非常に真摯に向き合い、多少の小説舞台というギミックはあれど、ここまで丁寧に書かれるとじっと腰を添えて読まざるを得ません。むしろ読ませて下さいと土下座したいくらいです。
人によっては文章や展開がくどいとか、もっと展開を早くしろとか文句あるでしょうけど、個人的にはそんなものが欲しかったら別のSSを読めと言いたい。というかむしろそれはこのSSの楽しみ方として間違っていると言いたい。このSSみたいに、ただ忠実にキャラクターたちの世界を描いているフレンチな料理と、ド派手な戦闘と泣ける展開という調味料を目分量でどかどかつっこむ中華料理の味わい方を一緒にするのはさすがに違いますよ。私はフレンチも中華も大好きですけどね!! ……コホン、ともかく静かに丁寧に味わってこそ、このSSの面白さがわかるものなんです。エライ人には(ry
これまたなんというか……。
敢えて紅茶で例えるなら、このSSはダージリンのファーストフラッシュでしょうね。セカンドに比べて渋く、オータムに比べて風味がなく、人によっては青臭いとさえ蔑まれる若々しい茶葉の香りは、まさにこの物語にしっくりくる。
若いっていいなぁ。
このSSの主人公であるリョウくん、本当若くて一途で人一倍思いやりがあって、そして人一倍「医学」に関しては頑固なんですよね。自分はどうなってもいいし、どう思われてもいい。だけど、人の病を治すことに関しては、誰がなんと言おうと、それこそ宗教的禁忌を犯してでも、譲らない。たとえそれが誰かとぶつかり合う事になっても。
実際、医学の発達が薄い世界で、しかも宗教が信じられている世界で、異端の考えを持ち込むのは非常に困難なことです。こっちの世界の歴史的に見ても、地動説が受け入れられるようになった経緯や進化論が認められるようになる途中で、多くの人々が宗教信仰の前に苦渋をなめさせられています。そして科学が発達した今尚、それらの事象を信じない人もたくさんいます。そんなことわかった上で、それでも自分の医学への思いを貫くのだから、大したものだ。
もっとスマートで理性的で妥協的で協力的な選択ができるはずなんですよ。仕方がないと割りきって、届かないと諦めて、見なかったことにすることだってできる。それがたぶん賢い生き方で、楽な生き方なんですけど、リョウは決してそれをしない。馬鹿だとわかっていても、自分の思いを貫くことを選ぶ。人はそれを愚者と呼ぶかもしれないけれど、そこに何か若い頃に忘れてしまった大切なものがある気がして、無意識のうちに彼の行動に惹かれ、見守り、草陰の中からそっと応援してしまう。
主人公であるリョウも魅力的なんですが、それ以上に彼の周辺にいるキャラクターが魅力的なんですよね。友人であるヘイ、仄かな好意を寄せるカリア、その他よき理解者たるヘイル夫妻やクレイなど、揃いも揃ってこいつら見ててハラハラするリョウを支えているんですよね。まるで子の成長を見守る大人のように、時に叱り導き、時に叱咤し励まし、時に喜び笑い合う。そうやって彼らが傍にいるからこそ、リョウはこの世界に降り立って、自らの夢を折られても、まっすぐ前を向いて進めるんでしょう。
いやぁ、ひたすらに丁寧だわ、このSS。
若い人の理想と、諦めない思考と、応援したくなる周りの気持ちを、段階立ててゆっくりしっかり描いているせいか、臨場感あふれる、とまではいかないものの作中時間と各キャラクターの感情の進行が手に取るようにわかるんですよ。医学という一つのテーマに対して非常に真摯に向き合い、多少の小説舞台というギミックはあれど、ここまで丁寧に書かれるとじっと腰を添えて読まざるを得ません。むしろ読ませて下さいと土下座したいくらいです。
人によっては文章や展開がくどいとか、もっと展開を早くしろとか文句あるでしょうけど、個人的にはそんなものが欲しかったら別のSSを読めと言いたい。というかむしろそれはこのSSの楽しみ方として間違っていると言いたい。このSSみたいに、ただ忠実にキャラクターたちの世界を描いているフレンチな料理と、ド派手な戦闘と泣ける展開という調味料を目分量でどかどかつっこむ中華料理の味わい方を一緒にするのはさすがに違いますよ。私はフレンチも中華も大好きですけどね!! ……コホン、ともかく静かに丁寧に味わってこそ、このSSの面白さがわかるものなんです。エライ人には(ry
2012年9月1日土曜日
SSメモ:LUNAR! CLANNAD
LUNAR! CLANNAD(小椋正雪)
何気ない日常を描くことは非常に難しい。
小説でも映画でも何にでも言えることかもしれませんが、ことSSに限ってその難しさは尋常じゃないくらい難易度が上がると個人的に思っています。
元々からして日常というありふれたものを描写するのは大変なことです。しかも小説などの商業作品になると、どうしても個人の書きたいものより読者の読みたいものを優先して筆を取らないといけないので尚の事大変ですよね。(一部例外みたいな人たちもいますが)。
翻ってSS作家を見てみるとそれはもうフリーダムであり、これでもかと自分の書きたいことを書き連ねています。SS読者も自分たちに合わせた作品を求めているわけではなく、自分たちが考えもつかないような作品を期待しているため、そうしたSS作家の態度を受け止めているわけですよ。なので読者にも想像できるような日常を描いた作品でウケているものといえば、えてしてちょっとした短編くらいでしょう。
したがって商業作品以上にSSは日常系というジャンルを描くのが難しいのです。
(もちろん「面白い」という前提があります)
さて長々と「日常」というジャンルについて個人的な思いを綴ったわけですが、結局のところ何が言いたいのかというと、
この作品、非常に優しい気持ちになれます
ということです(笑)
ちょっとした不思議と、ほんのり心暖まるよう出来事と、妙な現実感を行き来するのは原作ノベルゲーム「CLANNAD」の持ち味であり、アニメ化はもちろん、「CLANNADは人生」という有名ネタが出来上がる(笑)ほどには優しい物語でした。その優しさを、感じたそのままに、それでいてさらにその登場人物たちがいきいきと生活している様子を描いたのがこの作品です。
いや、素晴らしい。
これほどまでに丁寧に、それでいて見事に「CLANNAD」という作品を調理しているCLANNAD SSは他にないと思います。ひたすらに日常を純化させ、サザエさんのごとく平和な世界が展開されている様は、見ていて飽きるどころか心が和むほど。癒されるとはまさにこの作品の読後感のことを言います。
それにしても主人公の○ちゃん(作者のネタバレ回避表現。しかしバレバレ?w)がやたらと馴染む馴染むw ほぼオリキャラなはずなのに、決してそんな空気はなく、むしろもうこれ公式でいいんじゃないかと思うくらい、原作キャラ達との間に混じってますよ。
っていうか原作キャラたち既に大人なんですが、ちょっとお前ら精神年齢おかしくないか!? 作中でいつまでも若いままじゃいられないとかいいつつ、精神的にはすっげぇ若いよ!! むしろ行動力とかも若すぎて羨ましいよ!! ただ、ちゃんと色々な線引ができているのは、さすがといったところか。ちゃんと成長しているんだなぁ、っていろいろ実感できます。
投稿形式がやや特殊で、短編連載という形をとっているわけですが、作者の書きたいものを書いているので時系列がバラバラなんですよね。(幼稚園時代を書いた次は、大学時代を書いているとか)。そうした形式が苦手な人は、時系列にまとめた投稿ページもあるのでそちらを見ればいいと思います。
平凡な日常に潜む穏やかな生活を鮮やかに切り取ってみせる作者の力量、恐れ入るとはこのことです。作者はついに商業デビューしたらしく、これからはネットだけでなく商業の方でも頑張って欲しいですね。
2012年8月28日火曜日
SSメモ:Re:ゼロから始める異世界生活
Re:ゼロから始める異世界生活(鼠色猫)
昨日と同じ今日が延々と続くとしたら、それはまさしく絶望なんだろうなぁ。
人が自殺を考えるのは、辛いからではなく、辛いのがこの先延々と続く確信を抱いた時なんだと個人的には思ってます。日本の社会ってかなり固定化されていますから、ちょっとやそっとじゃ自分の立ち位置から抜け出せないんですよね。だからこそこんなにも年間で自殺者を排出しているんだろうと。まぁ、自殺の9割は他殺という言葉は言い得て妙なりですよね。
さておき、この作品は主人公のスバルくんが死んだら特定の時間軸まで記憶を保って戻ってくる死に戻りループものです。
ループ、そうループ!!
まさかSSでこのネタを使ってくるとは思いませんでした。ノベルゲームなどではすっかりお馴染みの手法なわけですが、ことSSになるとなかなか難しい。なにせ周回プレイという概念がありませんからね。しかしそれを逆手に取り、「周回プレイで少しずつ情報を得ているプレイヤー」自体を描けばご覧のとおり、この作品の完成ですよ。
たぶんこの手の死に戻り設定は既存の作品として(あるいは既存のジャンルとして)存在しているんでしょうけど、少なくとも私が知る限りこのSSほど優秀に、それでいて薄ら寒さを感じさせるようなものはありません。無駄に明るい性格をしている(努めている)ちょっとバカで一途なスバルという主人公だからこそ、一見重い設定にもポップな雰囲気が醸し出されていますが、これ普通の個性のない主人公でやったらめちゃくちゃ重苦しくなるぞ(笑)
仲良くなった人から他人行儀な目で見られ、必死の繕いはさらなる不信を呼び、かといってこれまでのことを一切忘れて過ごそうにも制限時間が課せられ、その先には絶望しか見えない……。おいおいおい、冗談じゃなくこれ主人公がスバルくんでよかったと思えてきたよ。基本的に芸人体質なスバルくんがいるだけで、コメディチックな舞台と登場人物とのコントのような掛け合いが生まれるので、シリアスだけじゃなく物語の空気を味わえます。
1章の時点ではまだ物語の方向性が見えなかったんですよね。スバルくんがこの謎ワールドに突入して、傷つきながら文字通り命を代償に多くの情報を得て、なんとかこの世界で生きていくための基盤を作ることに成功した、というまぁありふれたお話。ちょっと変わった異世界ものだなぁとしか思わなかったんですが、2章で世界から突き放されてどん底に落ちた瞬間は、ループしてないこっちもズシンと腹の下に何かが来るような感触がありました。見てられない、という状況をまさかSSで味わう日がこようとは思っても見なかったので、だからこそ余計に作品の行方を見届けたくなるんですよね。
現段階で物語としてはようやく世界の全容が見えてきたところ。なぜスバルが死に戻るのか、魔女の正体とはなんなのか、どうして1章が存在したのか、様々な謎を提示しつつ風呂敷を広げていく作者のSSを魅せる力には感嘆を覚えます。
だがしかし、テヘペロ☆はいただけないぞ、スバルくん。
そこはせめてメンゴ♪って謝らないと。(3章13話)
昨日と同じ今日が延々と続くとしたら、それはまさしく絶望なんだろうなぁ。
人が自殺を考えるのは、辛いからではなく、辛いのがこの先延々と続く確信を抱いた時なんだと個人的には思ってます。日本の社会ってかなり固定化されていますから、ちょっとやそっとじゃ自分の立ち位置から抜け出せないんですよね。だからこそこんなにも年間で自殺者を排出しているんだろうと。まぁ、自殺の9割は他殺という言葉は言い得て妙なりですよね。
さておき、この作品は主人公のスバルくんが死んだら特定の時間軸まで記憶を保って戻ってくる死に戻りループものです。
ループ、そうループ!!
まさかSSでこのネタを使ってくるとは思いませんでした。ノベルゲームなどではすっかりお馴染みの手法なわけですが、ことSSになるとなかなか難しい。なにせ周回プレイという概念がありませんからね。しかしそれを逆手に取り、「周回プレイで少しずつ情報を得ているプレイヤー」自体を描けばご覧のとおり、この作品の完成ですよ。
たぶんこの手の死に戻り設定は既存の作品として(あるいは既存のジャンルとして)存在しているんでしょうけど、少なくとも私が知る限りこのSSほど優秀に、それでいて薄ら寒さを感じさせるようなものはありません。無駄に明るい性格をしている(努めている)ちょっとバカで一途なスバルという主人公だからこそ、一見重い設定にもポップな雰囲気が醸し出されていますが、これ普通の個性のない主人公でやったらめちゃくちゃ重苦しくなるぞ(笑)
仲良くなった人から他人行儀な目で見られ、必死の繕いはさらなる不信を呼び、かといってこれまでのことを一切忘れて過ごそうにも制限時間が課せられ、その先には絶望しか見えない……。おいおいおい、冗談じゃなくこれ主人公がスバルくんでよかったと思えてきたよ。基本的に芸人体質なスバルくんがいるだけで、コメディチックな舞台と登場人物とのコントのような掛け合いが生まれるので、シリアスだけじゃなく物語の空気を味わえます。
1章の時点ではまだ物語の方向性が見えなかったんですよね。スバルくんがこの謎ワールドに突入して、傷つきながら文字通り命を代償に多くの情報を得て、なんとかこの世界で生きていくための基盤を作ることに成功した、というまぁありふれたお話。ちょっと変わった異世界ものだなぁとしか思わなかったんですが、2章で世界から突き放されてどん底に落ちた瞬間は、ループしてないこっちもズシンと腹の下に何かが来るような感触がありました。見てられない、という状況をまさかSSで味わう日がこようとは思っても見なかったので、だからこそ余計に作品の行方を見届けたくなるんですよね。
現段階で物語としてはようやく世界の全容が見えてきたところ。なぜスバルが死に戻るのか、魔女の正体とはなんなのか、どうして1章が存在したのか、様々な謎を提示しつつ風呂敷を広げていく作者のSSを魅せる力には感嘆を覚えます。
だがしかし、テヘペロ☆はいただけないぞ、スバルくん。
そこはせめてメンゴ♪って謝らないと。(3章13話)
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