2012年9月18日火曜日

SSメモ:俺の人生ヘルモード

俺の人生ヘルモード(侘寂山葵)

トリップものがいつもいつも作者の願望を映したような希望溢れる生ぬるい作品になると思うなよ!!と言わんばかりの、のっけからの鬼畜仕様……なはずだったわけですが、いつの間にかご都合主義に変わり気がつけば割りと強い力と心強い相棒を手に入れて、これから無双状態か!と思いきや、やっぱりそんなことなかったぜと次々試練が待ち受け、でも案外展開がテンプレート化してきてて、はいはいヘルモードヘルモード(笑)と安易にSSを読み進めていたら、底なし沼どころか奈落の穴に落とされてすいませんと全力で焼き土下座しているわけで、つまり何が言いたいかというと……。

パネェ。。。

あかんだろ、これ。俺の人生どころか皆の人生ヘルモードだよ。人生3回くらいやり直してもこの状況に放り出されたら間違いなく死ぬ自身があるよ。つーか一話にして主人公意外トリップ者全滅ってどうよ。テンプレどおり魔物に襲われてみました☆みたいなかわいいものじゃなくて巨人と虫に食い散らされたり、人間ボールにされたり、15禁タグの威力が遺憾なく発揮され、しかも死なないために立ち向かうとかではなくて、黒い沼に身を隠してひたすら耐えるとか、それなんてファンタジー……。

始まりからヘルモード全開で飛ばしまくってて大丈夫かよと思いましたが、ワシのヘルモードは108式まであるので大丈夫だ問題ない状態。問題ありすぎだ。所詮序盤のヘルさなんてただの前菜だったわけですよ。魔物が直に向かってくるだけましで、そもそも気づかないうちに捕食されたり、生きたまま栄養分にされたりがざらになる後半を見ると、あぁなんと平和な世界……じゃねぇよ……マジで……。

主人公のメイくん、よくもまぁ耐えれたものだわ……。いくら相棒が励ましてくれたり、いい仲間に恵まれたりしたとはいえ、こんなダンジョンに何度も潜り込む勇気とか湧かないって。しかもなんか黒幕っぽい人物に目をつけられて、狙われるはめになってるし。人生の難易度が変わり過ぎなのに、よくついて行けるなぁ。

メイだけではなく、さりげなくメイの仲間も度胸とか覚悟が相当あるんですよね。相棒たるドリーがメイと一蓮托生な覚悟をしていることはもちろん、ドランやリーンもメイを信頼しているし自分のできることをわきまえている。無理についていくことはせず、自分にできることをやるし、メイもそれを求めているものだから、こいつらのチームワークはすごい。だからこそ、そのチームワークが発揮できない状況においての絶望感が凄まじいわけですが。

しかもこのお話、ただただヘルモードがすごいだけではなくて、話の広げ方もすごい。起伏にとんだ展開とはまさにこのこと。ダンジョンの成り立ちも深く考えられているし、それに関するエピソードを外伝にすることで、徐々に徐々に本編が真実に近づき空気が張り詰めていく様子も直に味わえるし、何より物語の落とし方が異常にうまい。どこまで読者を絶望に叩きこめば気が済むんだ……。
とりあえず現在の最新話は、絶望から軽く持ち上げている状況なので、次の話以降どれだけ下に突き落とされるか楽しみです。